水上式と追尾式で太陽光発電の効率アップ、下水からCO2フリーの水素もエネルギー列島2016年版(11)埼玉(2/3 ページ)

» 2016年07月05日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

太陽光発電の効率が15%を超える

 埼玉県内では水に関連した太陽光発電の導入事例が数多く、各地の浄水場にも広がっている。川島町の北側に隣接する吉見町にある県営の「吉見浄水場」では、構内の遊休スペースや浄水池の上部に太陽光パネルを設置した(図5)。吉見浄水場では地下に浄水池があって、地上部分を太陽光発電に活用している。

図5 「吉見浄水場」の全景(上)、太陽光発電設備(下)。出典:埼玉県企業局

 浄水場全体では約4000枚の太陽光パネルを使って最大950kW(キロワット)の電力を供給できる。2014年12月に運転を開始して現在は2年目に入っている。年間の発電量は111万kWhを見込んでいたが、2015年度の実績では想定を大幅に上回って126万kWhに達した(図6)。

図6 「吉見浄水場」の月別発電量の予測と実績(2015年度)。kWh:キロワット時。出典:埼玉県企業局

 1年のうち日照時間が短い11月から1月にかけては想定よりも発電量が少なかったが、それ以外の期間は予想以上に発電量が増えた。年間を通した設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は15.2%になり、国内の太陽光発電の標準値14%を大きく上回った。この地域一帯が日照条件に恵まれ、太陽光発電に適していることを示す結果である。

 さらに太陽光発電の効率を高める取り組みも進んでいる。北部の本庄市では、太陽の位置に合わせて太陽光パネルの向きが変わる追尾式の発電設備を実証中だ。市内の3カ所に合計7基の追尾式システムを設置した(図7)。1基に24枚の太陽光パネルを搭載して発電能力は6kWになる。発電量は通常の据え置き型と比べて約1.3倍を見込める。

図7 追尾式の太陽光発電設備(本庄市の「はにほんキヤノン電子発電所」)。出典:埼玉県企画財政部

 本庄市は埼玉県が推進するエコタウンプロジェクトの実証場所に選ばれて、その一環で2015年5月に追尾式の太陽光発電を開始した。設置場所は駅前広場や総合公園、民間企業の事業所の構内の3カ所にある。据え置き型の太陽光発電も市内の各所に展開して、再生可能エネルギーの地産地消の効果を検証中だ(図8)。

図8 「本庄市エコタウンプロジェクト」の主な発電設備。出典:埼玉県環境部

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