本庄市内では下水の汚泥や食品廃棄物を利用したバイオマス発電の実証プロジェクトも進んでいる。下水処理場の「小山川(こやまがわ)水循環センター」の構内に建設した試験プラントを使って、2015年4月から2016年9月まで実証運転を続ける予定だ(図9)。
このプラントでは下水処理場で発生する汚泥のほかに、市内のスーパーマーケットや食品工場などから排出する廃棄物を加えて、メタン発酵でバイオガスを発生させる。バイオガスを燃料に利用して電力と熱を供給しながら、発酵に適した条件や下水汚泥と食品廃棄物の混合率などを検証する。発酵後の残りカスをセメントの原料にリサイクルする試みも実施中で、2018年度の実用化を目指す。
下水の汚泥から発生させたバイオガスを使って、水素を製造する研究プロジェクトも始まろうとしている。県営の「東松山市高坂浄化センター」で2016年11月に実証試験を開始する計画だ。バイオガス(消化ガス)を濃縮して純度の高い水素を製造する試みである(図10)。
生物由来のバイオガスで水素を製造すれば、CO2(二酸化炭素)を排出しないクリーンな水素になる。研究プロジェクトを通じて、製造した水素の品質が燃料電池車で使える基準を満たすことを検証する。下水から高品質の水素を効率よく製造できることを確認したうえで、ほかの下水処理場にも展開してCO2フリーの水素を大量に供給する狙いだ。
埼玉県では国が推進する水素社会に向けて、東京オリンピック・パラリンピックを開催する2020年までに、県内17カ所に水素ステーションを普及させる目標を掲げている(図11)。さらに2025年には30カ所に広げて、6万台の燃料電池車に水素を供給できる体制を整備する。
引き続き太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入量を増やしながら、バイオマスによるCO2フリーの水素の供給量を拡大させていく。面積の広い県と比べて資源が限られる中でも、エネルギーの地産地消を推進することは十分に可能だ。
固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模は着実に伸びている。太陽光とバイオマスに加えて小水力発電の導入量も増え始めた(図12)。人口が集中する首都圏の環境に適した方法で再生可能エネルギーが広がり、東京オリンピック・パラリンピックに向けて水素エネルギーの普及計画が加速する。
2015年版(11)埼玉:「水際で生きる太陽光と小水力発電、バイオマスから水素も作る」
2014年版(11)埼玉:「大きな池に降り注ぐ太陽光、水が豊かな低地で相乗効果」
2013年版(11)埼玉:「狭い首都圏で太陽光発電を増やす、池の上にもメガソーラーを建設」
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