下水汚泥から2500万kWhの電力、水素も取り出し燃料電池車が動く自然エネルギー(1/2 ページ)

埼玉県は下水処理場で発生する汚泥を利用したバイオマス発電事業を開始する。2019年から発電を開始し、2029年までに発電能力を一般家庭5000世帯分の合計2500万kWhまで拡大する。処理場内には太陽光発電も導入し、さらに汚泥から水素を取り出して燃料電池車への供給にも取り組む計画だ。

» 2015年09月15日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 下水道には2つの種類がある。1つが河川、湖など複数の市町村にまたがる水域の水質保全を行う流域下水道で、これは都道府県が管理している。流域市町の下水を県が管理する下水処理場で一括処理する仕組みだ。もう1つは公共下水道で、こちらは主に市街地などの下水を排除する役割を担っている。管理は基本的に市町村が担当する。

 県面積に占める河川割合が全国1位と水資源に恵まれる埼玉県は、流域下水道を処理する下水処理場を8つの流域で合計9カ所管理している。このうちの3つは処理水量で全国トップ3に入っており、9カ所の合計処理量は1日当たり約177万立法メートル。これはさいたまスーパーアリーナ2.4杯分に相当し、県人口の約7割となる約530万人分の下水を処理している(図1)。

図1 埼玉県の流域下水道のデータ 出典:埼玉県

 毎日これほど大量の下水を処理すれば、それに伴い多くの汚泥が発生する。こうした汚泥は固形燃料や建設資材に利用しているが、埼玉県知事の上田清司氏は2015年9月9日の記者会見で、さらにこの汚泥をバイオマス発電にも利用する計画を明らかにした。

 同県では下水処理による汚泥から、年間約1300万Nm3(ノルマル立法メートル)のメタンガスが発生している。このメタンガスを利用して、バイオガス発電を行う仕組みだ。まず2019年から元荒川、中川水循環センターの2カ所で発電を開始し、他の処理場にも順次拡大していく(図2)。

 2029年には4カ所の処理場で発電を行う計画で、合計で年間約2500万kwh(キロワット時)の発電量を見込んでいるという。実現すれば、一般家庭約5000世帯分の電力を再生可能エネルギーで得られる計算になる。さらに最大で年間約1万2000トン相当の温室効果ガスを削減できる見込みだ。これらの電力を全て固定買取価格制度を利用して売電するとすれば、現在の買い取り価格で換算して10億円近い売電収入が見込める。

図2 バイオガス発電と処理場を活用した太陽光発電の概要 出典:埼玉県

 さらに中川、小山川の2つの処理場では敷地内で太陽光発電にも取り組む。こちらはバイオガス発電より一足早く、2016年から発電を開始する。2カ所を合わせた太陽光パネルの設置面積は3.7ha(ヘクタールで)、年間の合計発電量は一般家庭800世帯分に相当する約400万kWhを見込んでいる。

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