最北端の地に10基の大型風車、1万9000世帯分の電力を供給自然エネルギー(1/2 ページ)

全国各地に風力発電所を展開するユーラスエナジーグループが北海道の稚内市に大規模な風力発電所を建設する。1基の発電能力が3MWの大型風車10基を建設する計画で、2016年9月に着工して2018年2月に運転を開始する予定だ。北海道では風力発電の電力から水素を製造する取り組みも広がる。

» 2016年07月21日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 稚内市の位置。出典:稚内市役所

 日本の最北端に位置する稚内市はオホーツク海と日本海に面した風の強い町だ(図1)。年間の平均風速は7メートル/秒を超えて、風力発電に必要な5メートル/秒を大きく上回る。現在は74基の風車が稼働中で、市内の電力需要の85%を供給できるほど風力発電の導入が進んでいる。

 その稚内市で新たに大規模な風力発電所の建設が始まる。国内で最大の風力発電事業者であるユーラスエナジーグループが海に近い丘陵地帯に10基の大型風車を設置する計画だ(図2)。1基で3MW(メガワット)の発電能力があるゼネラルエレクトリック製の風力発電機を採用して、合計で最大30MWの電力を供給する。

図2 稚内市の丘陵地帯に建設する「天北ウインドファーム」の完成イメージ。出典:ユーラスエナジーホールディングス

 すでに環境影響評価の手続きを完了済みで、2016年9月に建設工事に入る。運転開始は2018年2月を予定している。年間の発電量は6800万kWh(キロワット時)に達する見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万9000世帯分に相当する。稚内市の総世帯数(1万8000世帯)に匹敵する規模の電力供給量になる。

 稚内市では地域の自然を守りながら地球環境にやさしい街づくりを目指して、2011年に「環境都市わっかない」を宣言した。風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギーを活用した地域社会の姿を世界にアピールする狙いがある。市内には風力発電所やメガソーラーのほか、生ごみを発酵させるバイオガス発電も市の施設で実施中だ(図3)。

図3 稚内市内の主な再生可能エネルギー発電施設。出典:経済産業省

 風力発電ではユーラスエナジーグループが2005年に運転を開始した「宗谷岬ウインドファーム」の規模が圧倒的に大きい。日本の最北端にある宗谷岬の南側に広がる丘陵地帯に57基の風車を展開している(図4)。発電能力は57MWで、運転開始当時は日本最大の風力発電所だった。現在でも島根県の「ユーラス新出雲ウインドファーム」(78MW)、福島県の「郡山布引風力発電所」(66MW)に次いで3番目に大きい。

図4 「宗谷岬ウインドファーム」の全景と風車。出典:ユーラスエナジーホールディングス
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