内陸に建設する国内初の火力発電所が着工、120万kWの電力を東京ガスに供給電力供給サービス(1/2 ページ)

神戸製鋼所が栃木県内で大規模なガス火力発電所の建設工事に着手した。従来の臨海地域に建設する場合と立地条件が異なるため、発電に利用した蒸気を水冷式ではなくて空冷式で循環させる点が特徴だ。2019年から2020年に2基の運転を開始して、発電した電力は全量を東京ガスに供給する。

» 2016年07月22日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 今後の成長分野として電力事業を拡大する神戸製鋼所が栃木県の真岡市(もおかし)で「神鋼真岡発電所」の工事を6月から進めている。太平洋沿岸から50キロメートル以上も離れた内陸部にあり、国内で初めて内陸型の火力発電所を建設するプロジェクトとして注目を集める(図1)。

図1 「神鋼真岡発電所」の建設計画地。出典:経済産業省

 真岡市内の工業団地にある9万平方メートルの敷地に、都市ガスを燃料に利用する最先端の火力発電設備を導入する計画だ(図2)。現在の火力発電で最高の効率を発揮するコンバインドサイクル方式を採用するほか、発電に利用する水を空冷式で循環させることによって内陸の立地条件に適応させる。

図2 「神鋼真岡発電所」の完成イメージ。出典:神戸製鋼所

 1基あたりの発電能力は62.4万kW(キロワット)で、2基で構成する。1号機を2019年の後半に、2号機を2020年の前半に稼働させる予定だ(図3)。合わせて120万kWの電力を東京ガスに販売する契約を締結している。燃料の都市ガスは東京ガスが太平洋沿岸のLNG(液化天然ガス)基地からパイプラインで供給する。

図3 発電所の主要設備(上)と配置(下)。出典:神戸製鋼所

 コンバインドサイクル方式はガスを燃焼させて発電した後に、排熱を使ってボイラーで水を蒸発させて蒸気タービンでも発電することができる(図4)。神鋼真岡発電所に導入する蒸気タービンは高圧・中圧蒸気と低圧蒸気を併用する2段構成である。発電効率は現在の火力発電技術では最高水準の60%程度になる見込みだ。

図4 コンバインドサイクル発電設備の仕組み。出典:神戸製鋼所

 発電後の蒸気はファンで冷却して水に戻してから、再びボイラーで蒸発させる空冷式を採用した。従来の臨海地域に建設する火力発電所では海水を使って蒸気を冷却する水冷式が一般的だ。冷却に使った後の海水は海に戻す仕組みになっている。しかし内陸型の場合には大量の水を利用することがむずかしいために、空冷式の復水器を使って水を冷却して循環させる必要がある。

 神戸製鋼所は2013年3月に神鋼真岡発電所の環境影響評価の手続きを開始して、3年強の期間をかけて2016年5月に手続きを完了した。発電所の運転開始後も大気中に排出するガスの窒素酸化物の濃度を常時監視するほか、排水設備から出る水質を月に1回以上の頻度で測定する。

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