営農型の太陽光発電で注目すべきプロジェクトが進んでいる。千葉工業大学を中心とする研究チームが追尾式の太陽光パネルを農地に設置して、その下で水耕栽培によるレタスの生産に取り組む。通常よりも年間の発電量を11%増やすことができ、エネルギー消費量をゼロに抑える植物工場を目指す。
太陽光発電と水耕栽培を組み合わせた「水耕ソーラーシェアリング」の実証システムが千葉市内の農地の一角にある(図1)。千葉工業大学の久保研究室がベンチャー企業2社と共同で取り組むプロジェクトで、9月にドイツの国際学会「Electronics Goes Green 2016+」で発表した内容を10月12日に公開した。
水耕ソーラーシェアリングの大きな特徴は2つある。1つは農地の上部に追尾式の太陽光パネルを設置して、太陽の動きに合わせながらパネルが回転して発電量を増やすことができる。もう1つの特徴はパネルの下で栽培する農作物を育てる方法として、土を使わずに地下水を利用した水耕栽培を採用している点だ(図2)。
追尾式の太陽光パネルは1枚の発電量が70W(ワット)で、合計264枚を設置した。全体の発電能力は18.5kW(キロワット)になる。営農型の太陽光発電で認められている農地に支柱を立てて太陽光パネルを設置する方式だ。1列ごとに太陽光パネルをつなぐパイプにモーターを装備して、パネルの傾きを変えることができる(図3)。
朝にはパネルの面が東側に向いていて、太陽の動きに合わせて夕方までに西側に傾いていく。あらかじめ太陽の軌道を予測したプログラムをコントローラに組み込んでおき、コントローラの指令でモーターが動く仕組みだ。実証の結果、通常の太陽光発電(南向き15度に固定)と比べて年間の発電量は11.4%増えた。
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