水耕栽培の手法は研究チームのメンバーであるセプトアグリが開発した「EZ水耕」を応用した。セプトアグリは2014年に設立したベンチャー企業で、「21世紀の新しい農業」を目指して環境負荷の低い農業生産と再生可能エネルギーの両立に取り組んでいる。EZ水耕は特殊な施肥方法を使って、地下水や水道水を流すだけで農作物の栽培を可能にした(図4)。
千葉市の実証システムでは温度が安定している地下水をポンプでくみ上げ、太陽光パネルの下に設置した水耕栽培用の溝の中を流す仕組みになっている。ポットに入れた野菜の苗を溝に並べて、水と太陽光だけで栽培する方式だ。一般的な水耕栽培では液肥(液体肥料)を使うために、ビニールハウスを建てて臭い防止と温度維持が必要になる。EZ水耕はビニールハウスが不要で、ソーラーシェアリングも可能になる。
研究チームは5月と7月に水耕ソーラーシェアリングによる栽培実験に取り組んだ。レタスの種から約3週間かけて苗を育てた後に、約2週間で収穫できる状態まで成長した(図5)。この間の気温は26〜40℃で、水温は23〜32℃の適正範囲に収まった。
水耕ソーラーシェアリングの次のステップで目指すのは、「開放型ゼロエネルギー植物工場(Open Zero Energy Plant factory、OZEPf)」の実用化だ。農地を利用して太陽光発電の電力だけを使って、高付加価値の野菜を低コストで短期間に生産できるようにする。引き続きOZEPfに必要な技術要素の改良を続けて普及を図る。
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