佐賀県の棚田で2015年の春から営農型の太陽光発電を実施中だ。2枚の棚田の上部に合計58枚の太陽光パネルを設置して、稲を育てながら電力を作る「二毛作」の実証プロジェクトである。1年目の結果は米の収穫量に影響が出ることはなく、発電量も想定どおりに推移している。
「米と発電の二毛作」に取り組む棚田は、山に囲まれた佐賀市の三瀬村(みつせむら)にある。段になった2枚の棚田の上部に太陽光パネルを設置して、稲の生育状況と発電事業の可能性を検証するプロジェクトだ(図1)。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が福岡県の福永博建築研究所と共同で2016年度まで実施する。
この棚田では5月中旬に田植えを済ませて、稲が太陽光を浴びながら順調に成長した(図2)。太陽光パネルの間隔を1.8メートル空けて設置することで、稲にも1日あたり9時間以上は太陽光が当たるように計算されている。田植えから5カ月が経過した10月中旬には、予定どおり収穫を終えて「二毛作」を果たすことができた。
収穫した稲は九州大学の研究室で検査を実施した。棚田の中でも太陽光パネルの影が生じる「影区」と影ができない「対照区」に分けて、1株の稲からとれる米の重量を比較する方法だ。その結果、1枚の棚田では影区の収穫量が11%多く、もう1枚の棚田では10%少なかった。稲作で1割程度のばらつきは誤差の範囲とみなせるため、太陽光パネルが悪影響を及ぼすことはなかったと考えられる(図3)。
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