バイオマス発電から海洋ドローンまで、福島で進む実用化プロジェクト蓄電・発電機器(1/2 ページ)

福島県の太平洋沿岸地域の復興を促進する「福島イノベーション・コースト構想」の取り組みが広がってきた。地元の企業を中心に34件にのぼる新技術の実用化プロジェクトが国の支援を受けて始まっている。ロボットやエネルギーをはじめ6つの分野を対象に2018年度まで実施する計画だ。

» 2016年10月19日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 「福島イノベーション・コースト構想」は原子力発電所の事故の被害を受けた太平洋沿岸地域(通称:浜通り)の復興を目指して2014年1月に始まった。原子力発電所の廃炉の研究開発をはじめ、新しい産業を生み出すロボットやエネルギー、農林水産業や医療機器の分野で実用的な技術を開発する狙いだ。

 2016年度には総額69億7000万円の国家予算を投じて、地元の企業を中心に補助金を交付して技術開発を支援していく。そのうち1次公募で選ばれた34件のプロジェクトの概要が明らかになった。ロボットが12件、エネルギーが2件、環境・リサイクルが7件、農林水産業と医療機器が6件ずつ、環境回復・放射能が1件だ。実施する場所は南相馬市といわき市に多く集まっている(図1)。

図1 「福島イノベーション・コースト構想」の実用化開発補助事業の実施場所。出典:資源エネルギー庁

 エネルギー分野の1つ目は小型バイオマス発電システムの実用化である。いわき市に本社がある建築資材卸売会社の共栄が新規事業として取り組む。地域で発生する食品廃棄物を利用できる小型のバイオマス発電システムを開発する(図2)。いわき市内で2017年2月から実証プラントを使って実験を進める予定だ。

図2 食品廃棄物を利用できる小型バイオマス発電システムの構成イメージ。出典:資源エネルギー庁

 1日あたり3トン程度の食品廃棄物を発酵させて、バイオガスを生成して発電するシステムである。発酵のための撹拌システムを改良することによって、低コストで発酵状態を作り出せる点が特徴だ。発酵後の廃液から肥料も製造する。2020年度までに商用プラント5基を浜通り地域に建設することが目標になっている。

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