再生可能エネルギーの中で最も導入しやすいのが太陽光発電だ。今後も長期的に導入量を拡大するために、政府の研究会が太陽光発電の競争力を強化する方向性をまとめた。最大の課題は導入費と運転維持費を低減することで、日本特有の複雑な市場構造が高コストの一因になっていると指摘した。
日本の太陽光発電の導入量は固定価格買取制度(FIT)によって急速に拡大したものの、買取価格の高さと発電量の不安定さを理由にブレーキがかかっている。長期的に太陽光発電の導入量を拡大していくうえで、解決すべき課題と実施すべき対策は何か。政府は2016年8月から「太陽光発電競争力強化研究会」を開催して検討を進めてきた。
研究会が10月18日に公表した報告書で示した方向性は3つある(図1)。第1に買取制度に頼らずに自家消費モデルへ移行する。そのためには買取価格が電気料金よりも安くなって、売電よりも自家消費のメリットを高める必要がある。いわゆる「グリッド・パリティ(grid parity)」と呼ぶ状態だ。
第2に挙げた点は、買取価格を左右する発電システムの導入コストを低減させることである。日本では市場の構造が多段階に分かれているために、海外と比べて高コストになっているのが現状だ。そして第3に太陽光発電を安定した電源として利用できるように、事業者が適切な運用管理を実施できる体制を国全体で構築していく。
特に太陽光発電システムの導入コストに関しては、2020年と2030年の目標を設定して国際的にも競争力のある市場を目指す。非住宅用は発電能力1kW(キロワット)あたりの導入コストを2020年に20万円へ、2030年には10万円まで低減させる(図2)。
この目標値はNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が太陽光発電のコストを低減させるロードマップに掲げた発電量(kWh:キロワット)ベースの水準に合わせた。住宅用の導入コストも2020年代の早期に20万円/kWまで引き下げることを目指す。
現時点では日本の太陽光発電のコストは主要国の中で圧倒的に高い。ドイツをはじめ欧州の先進国と比べると、導入コスト(資本費)と運転維持費ともに2倍以上になっている(図3)。太陽光発電のコストを早急に引き下げることが日本の再生可能エネルギーを拡大するために最重要の課題であることは明らかだ。
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