大都市で生かす下水のエネルギー、バイオガス発電から熱まで供給エネルギー列島2016年版(27)大阪(3/4 ページ)

» 2016年10月25日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

ため池の太陽光発電から水素を製造

 大阪府内の下水処理場には太陽光発電も広がっている。大阪市を除く周辺の自治体には、大阪府が運営する下水処理場(水みらいセンター)が14カ所にある。そのうち半数の7カ所でメガソーラーが稼働中だ(図6)。

図6 メガソーラーを導入した下水処理場(上)、「中央水みらいセンター」の太陽光パネル(下)。出典:大阪府都市整備部

 下水処理場の構内に残る平坦な土地に太陽光パネルを設置した。全国で面積が2番目に小さい大阪府ならではの太陽光発電と言える。7カ所の発電能力を合計すると12MWにのぼる。発電した電力は平常時には固定価格買取制度で売電して、災害時には下水処理場の非常用電源として下水の処理に利用する。

 平坦な土地がない場合には、ため池の水面に太陽光パネルを浮かべる方法がある。内陸部の大阪狭山市(おおさかさやまし)は古くから農業が盛んな場所で、市内には約140カ所のため池が残っている。その中で最大の「狭山池」は日本最古のダム式ため池として知られる(図7)。

図7 「狭山池」の風景(上)、隣接する公園のトイレと管理棟の屋根に設置した太陽光パネル(下)。出典:大阪狭山市

 2016年に狭山池の築造から1400年を迎えるのを記念して、再生可能エネルギーの電力でCO2(二酸化炭素)フリーの水素を製造する「グリーン水素シティ事業」の検討を開始した。池の水面を利用した太陽光発電から着手する計画で、すでに発電事業者の公募を終えた。太陽光で発電した電力を使って水を電気分解してCO2フリーの水素を作る予定だ。

 大阪府は面積が小さいにもかかわらず、固定価格買取制度の適用を受けた太陽光発電の導入量では全国で21位に入る(図8)。廃棄物を中心にしたバイオマス発電では8位だ。太陽光とバイオマスの2本柱で再生可能エネルギーを拡大していく。

図8 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 建物の屋根を利用したメガソーラーも相次いで運転を開始している。そのうちの1つが堺市の物流施設「アイミッションズパーク堺」で2016年6月に稼働した(図9)。屋上の全面に合計1万枚の太陽光パネルを設置して、発電能力は2.75MW(メガワット)に達する。屋上に設置したメガソーラーでは国内で最大級だ。年間の発電量は310万kWhを見込み、860世帯分の電力を供給できる。

図9 「アイミッションズパーク堺」の太陽光発電設備。出典:オリックス

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