大阪府と大阪市は再生可能エネルギーを中心に150万kWにのぼる電力を2020年度までに増やす計画だ。下水処理場でバイオガス発電を拡大しながら、建物の屋根を利用した太陽光発電や地中熱による空調に取り組む。新たに水素エネルギーを拡大する「H2Osakaビジョン」にも乗り出した。
「おおさかエネルギー地産地消推進プラン」は大阪府と大阪市が連携して取り組むエネルギー改革の構想である。再生可能エネルギーを拡大して供給力を増やす一方、ガス冷暖房などを広めて電力の需要を削減していく。2020年度までに150万kW(キロワット)の電力を地産地消する体制を作り、電力会社に対する依存度を低減させる狙いだ(図1)。
再生可能エネルギーは太陽光発電に加えて、大都市で大量に発生する廃棄物を利用した発電に注力する。その中心になるのが下水処理場だ。大阪府と大阪市が運営する下水処理場には、バイオガス発電や太陽光発電が急速に広がっている。
大阪市は市内12カ所に展開する下水処理場のうち4カ所でバイオガス発電の導入プロジェクトを推進中だ。第1弾は市の北西地域を管轄する「大野下水処理場」で、2016年8月にバイオガス発電設備が運転を開始した(図2)。
下水の処理工程で生まれる汚泥を発酵させて、バイオガスを作って発電に利用する。発電能力が25kW(キロワット)のガスエンジン発電機を30台も導入した。年間の発電量は550万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1500世帯分に相当する。
さらに発電に伴って排出する熱で温水を作り、汚泥の発酵を促進するのに生かす。下水から生み出したエネルギーを効率よく利用できる仕組みになっている(図3)。大阪市は引き続き3カ所の下水処理場でも同様のバイオガス発電設備を導入して、2017年4月に一斉に稼働させる予定だ。
その段階で4カ所を合わせた発電能力は4090kWになり、年間の発電量は2580万kWhに拡大する。一般家庭の7100世帯分に相当する電力を供給できる。4カ所の下水処理場でバイオガス発電を実施するにあたって、民間企業の資金とノウハウを活用する民設民営方式を採用した。
大阪市はバイオガスと土地を事業者に提供して、ガスの利用料と土地の使用料を得たうえで、温水の供給も受けるスキームだ。発電事業者は大阪ガスグループのOGCTSを中心とする3社の連合体である。下水処理場に発電設備を建設・運営して固定価格買取制度で売電収入を得ながら市に料金を支払う。
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