家庭用の燃料電池の伸びが加速、年間5万台の販売台数に蓄電・発電機器(1/2 ページ)

ガスから電力と熱を作る家庭用の燃料電池「エネファーム」の販売台数が上向いてきた。2016年度は5万台に達する勢いで、前年度から20%以上の伸びになる見込みだ。価格の低下に加えて設置できる場所が広がり、国の補助金制度も後押しする。ガスの小売全面自由化で販売競争が加速する。

» 2016年10月28日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 2009年に世界で初めて「エネファーム」が日本市場に登場して以来、販売台数は着実に増えてきた。ところが2015年度に過去最高の4万台を超えたものの、成長のペースは鈍化してしまった。2016年度に入ると再び販売台数が伸び始めて、上半期だけで2.5万台に達している(図1)。このペースで増えていけば、年間で5万台を超えて前年度を大きく上回る勢いだ。

図1 エネファームの販売台数(2016年度は4〜9月)。LP:液化石油(プロパン)。出典:コージェネ財団

 エネファームはガスを改質して水素を作り、外気から取り込んだ酸素と反応して電力と熱を発生させる。熱は給湯や暖房に利用できるため、エネルギー効率が高くなる利点がある。政府は家庭や商店の省エネ対策としてエネファームの普及に力を入れ、2030年までに全国で530万台の導入を目指している。

 現状では累計の販売台数が20万台に満たないため、強力なテコ入れ策が欠かせない。政府は2016年度に総額55億円にのぼる補助金制度を新たに開始して、販売台数の拡大と製品価格の低下を促進している。その効果が上半期の販売台数の増加に表れた格好だ。

 エネファームには普及タイプのPEFC(固体高分子形燃料電池)と、高効率タイプのSOFC(固体酸化物形燃料電池)の2種類がある。2009年の発売当初は1台の価格が300万円と高かったが、2015年度にはPEFCが136万円に、SOFCも175万円まで下がった(図2)。さらに2016年度に開始した補助金制度でPEFCに15万円、SOFCに19万円の補助金を交付して販売価格の低下を加速させる。

図2 エネファームの普及台数と販売価格の推移。出典:資源エネルギー庁

 政府はエネファームを広く普及させるためには、PEFC方式の販売価格を70〜80万円まで引き下げる必要があるとみている。その目標を2019年度に達成して普及にはずみをつける考えだ(図3)。SOFC方式も2021年度に100万円まで低下させる。

図3 エネファームの価格低下イメージ。PEFC標準機(左)、SOFC標準機(右)、いずれも出力700ワットの製品。出典:資源エネルギー庁
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