木質バイオマス発電の勢いが加速、1カ月間で15万kW分が認定自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2016年11月15日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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1万kW超の発電設備が続々と運転開始

 7月に運転を開始したバイオマス発電設備のうち、発電能力が1万kWを超える大規模なものが全国で3カ所ある。いずれも木質バイオマスを燃料に利用する。最も大きいのは三重県の津市で稼働した2万kWの発電所で、JFEエンジニアリングが海に面した工場の構内に建設した(図3)。

図3 三重県の津市で運転を開始した木質バイオマス発電所。出典:JFEエンジニアリング

 年間の発電量は1億5800万kWh(キロワット時)を見込んでいて、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して4万4000世帯分を供給できる予定だ。燃料の木質バイオマスは地域で発生する間伐材のほかに、東南アジアから輸入するパームヤシ殻(PKS)を併用する。

 2カ所目は大分県の豊後大野市で稼働した「豊後大野発電所」である(図4)。エネルギー専業のエフオングループが建設・運営する。発電能力は1万8000kWで、年間に1億2000万kWhの電力を供給できる。この発電所では地域の間伐材を燃料に利用する。

図4 大分県の豊後大野市で運転を開始した木質バイオマス発電所。出典:エフオン

 続いて3カ所目の木質バイオマス発電所は岩手県の野田村で運転を開始した(図5)。燃料は地域の間伐材などに加えてPKSを利用する。発電能力は1万4000kWで年間に9650万kWhの電力を供給できる見込みだ。紙の販売とリサイクルを手がける日本紙パルプ商事が運営している。

図5 岩手県の野田村で運転を開始した木質バイオマス発電所。出典:日本紙パルプ商事

 固定価格買取制度では間伐材などを「未利用木質」に分類して、発電した電力の買取価格を32円か40円(発電能力による)に高く設定している。これに対して海外から輸入するPKSや製材所から出る端材などは「一般木質」に分類して、電力の買取価格は24円で低くなる。それぞれで燃料の調達コストに違いがあるためだ。

 木質バイオマス発電では大量の燃料を長期にわたって安定して調達することが大きな課題になっている。海外から大量に輸入できるPKSを加えることで、地域で発生する間伐材の増減にも対応しやすくなる。今後もPKSを燃料に使う木質バイオマス発電所は増える傾向にある。

 7月に新しく買取制度の認定を受けた発電設備の中には、さらに大規模な木質バイオマス発電所がある。岩手県の大船渡市で建設が決まった7万5000kWの発電所で、太平洋セメントと新電力のイーレックスが共同で2019年の秋に運転を開始する予定だ。この発電所でもPKSを燃料に利用する(図6)。

図6 木質バイオマス発電の燃料になるPKS(パームヤシ殻)。出典:イーレックス
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