発電量を2倍に、排熱を電力に変換する新材料蓄電・発電機器

東北大学の研究グループがNEDOプロジェクトの一環で、マンガンケイ化物を用いた新しい熱電変換材料を開発。低コストな材料を用いつつ、発電量の指標となる出力因子を従来比約2倍に高めた。自動車エンジンの排熱や工業炉からの排熱など、中温域の未利用熱を電力に変換する高出力な熱電発電モジュールの実現に貢献する成果だという。

» 2016年12月02日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 運輸・産業・民生のさまざまなな分野において、一次エネルギーの半分以上が利用されずに排熱になっている。こうした排熱を再びエネルギーとして活用できれば、大きな省エネが見込める。そこでNEDOではこうした未利用熱に着目し、その「削減・回収・利用」を可能とするための要素技術の開発と、システムの確立を目指したプロジェクトを2015年度から実施している。

 このプロジェクトの一環として、東北大学大学院工学研究科の宮崎讓教授と林慶准教授らの研究グループは、マンガンケイ化物系熱電変換材料の発電量の指標となる出力因子で、従来の約2倍に相当する2.4mW/K2mを実現したと発表した。自動車エンジンの排熱や工業炉からの排熱など、さまざまな未利用熱を電力に変換する低コストな高出力熱電発電モジュールの実現に貢献する成果だという(図1)。

図1 図1 今回開発した熱電変換材料の外観 出典:NEDO

 熱電変換材料は、固体に温度差を与えると電圧が発生するゼーベック効果を利用し、排熱から直接電力を得ることが可能な技術だ。しかし自動車エンジンや工場排熱など、中温域といわれる300〜700度で熱電性能の高い材料は、鉛、テルル、アンチモン、セレン、タリウムなど、毒性が高く希少で低融点の元素から構成されるものがほとんどである。原料コストが高く、また空気中での使用には工夫が必要なことなどから、広く利用されるには至っていない。

 一方、今回研究グループが利用した高マンガンケイ化物は、地殻表面に豊富に存在する元素から構成されている。熱的・化学的安定性に優れることから以前から熱変換材料への応用が検討されてきた。しかし通常の合金のように原料を高温で溶かして凝固させる手法で試料を合成すると、導電性と機械的強度が悪化することが課題だった。研究グループはこの課題を結晶構造中のマンガンをバナジウムで部分置換することで解決し、さらに鉄で部分置換した試料を作製。すると、約530度でこれまで報告されている材料の1.6〜2倍に相当する高い出力因子を示した。

 研究グループは今回開発したマンガンケイ化物系熱電変換材料をベースに、同等な性能のn型材料を創製し、自動車エンジンからの排熱や産業分野における工業炉からの排熱などを利用した高出力熱電発電モジュールの開発につなげる方針だ。

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