これだけは知っておくべき「電力業界の基本」3分で分かるこれからの電力業界(2)(2/3 ページ)

» 2016年12月08日 09時30分 公開
[江田健二スマートジャパン]

 しかし、年を追うごとに新電力による電力販売量は増していき、高圧部門の自由化から5年たった2010年度には1000万MWh(約3%)となりました。そして10年後の2015年度には、約2800万MWh(約9%)まで拡大しました。これは、自由化された当初と比較すると20倍ほどの電力販売量となります。

 特別高圧部門の新電力のシェアについて見ると、2005年までは徐々に販売量を伸ばしていき、同年で100万MWh(市場全体の約4%)となりましたが、その後は2014年までほぼ横ばいです。しかし、2015年度には約5.2%まで再びシェアを膨らませ、特別高圧においても徐々に存在感を増してきています。

3段階で進められている「電力システム改革」

 2016年4月から始まった「電力小売全面自由化」ですが、これは「電力システム改革」の一部として位置付けられています。ここでは、自由化の背景にある電力システム改革について、概要を説明します。電力システム改革は、東日本大震災を契機として顕在化したさまざまな電力システムの問題点や課題を解決するため、2013年に政府が閣議決定した「電力システムに関する改革方針」に基づき進められている改革で、主な目的は以下の通りです。

  1. 安定供給の確保
  2. 電気料金の最大限の抑制
  3. 需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大
photo

 この電力システム改革の施策は、第1弾である2015年の「広域的な送電線運用の拡大」、第2弾である2016年の「小売の全面自由化」、そして第3弾として今後予定されている「法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保」(発送電分離)の3つを大きな柱としています。

 まず、第1弾の改正電気事業法に基づき、2015年4月に「広域的運営推進機関」が創設されました。同機関には、全ての電気事業者が加入することとなります。広域的運営推進機関の役割として、例えば新規電源の接続の受付や系統情報の公開に係る業務などが挙げられます。 第2弾として、「電力小売全面自由化」が2016年4月1日から実施されました。一般家庭向けの電気の小売業への新規参入が可能となり、家庭も含む全ての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。

 そして第3弾では、2018年から2020年をめどに、「送配電部門の法的分離」(送配電部門の分社化)が実施される予定です。電気事業において公正な競争環境を整備するためには、送配電ネットワーク部分を中立的な共通インフラとして開放する必要があります。これまで、東京電力などの大手電力会社が送配電ネットワークを管理していました。しかしそれでは、送配電ネットワークを持つごく一部の企業が、自分たちの経営に有利になるよう小売事業を展開する懸念が生じます。そこで、送配電部門の中立性を確保することが重要となり、その手法として「法的分離」が実施されることとなります。

photo

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.