これだけは知っておくべき「電力業界の基本」3分で分かるこれからの電力業界(2)(1/3 ページ)

「電力小売業界」への就職・転職を目指す方に、急速に変化・多様化する業界動向を分かりやすくお伝えする連載の第2回。今回は電力業界で働く人なら知っておくべき電力業界の基礎知識を解説する。

» 2016年12月08日 09時30分 公開
[江田健二スマートジャパン]

発電所から需要家までの流れ

 ここでは、電力業界で働く人なら最低限知っておくべき電力業界の基礎知識を解説します。発電所で作られた電気は、電気を必要とするそれぞれの「需要家」へ送られるわけですが、具体的にはどのような流れで供給されているのでしょうか。まずは、発電所から電気を使う人(需要家)までの電気の流れを簡単に説明しておきましょう。

 電気は、山奥にある水力発電所や都市から遠く離れた火力発電所などから、電気を使われる場所まで、時には数百キロメートルもの旅をします。発電所で発電された電気は非常に電圧が高いことから、そのままでは使うことができません。そのため、電気の電圧を変える「変電所」で降圧しながら、それぞれの需要家に届けられています。

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 電流が送電線を流れると、電気抵抗のため「ジュール熱」という熱が出ます。この熱が出ただけ電気をロスすることになります。この熱は電流が多いほど大量に出るため、電圧を高くすることによって電流を少なくしてやればロスが少なくなります(同じ電力の電圧と電流は反比例します)。

 例えば、発電所の発電機から作り出される電気は、本来2万3000ボルトや1万2000ボルト程度の値ですが、電気を送る途中で電気抵抗によるロスが生じるため、最初に50万ボルトや27万5000ボルトという高い電圧にしてから送り出します。

 こうして送り出された電気は、超高圧変電所、一次変電所、二次変電所、配電用変電所と各変電所で徐々に電圧を下げて、需要家に届けられます。家庭や工場の場合は、柱状変電所の変圧器で100ボルトもしくは200ボルトに下げられ配電されます。皆さんが普段家庭で利用している電気は、このように電気が変換されていき、長い旅を経て運ばれてくるのです。

新電力の動向、高まる存在感

 ここでは、既存10電力会社以外の新規参入電力会社(新電力)による電力販売量やシェアの推移について、概要を見ておきたいと思います。

 具体的なデータを見る前に知っておくべき知識として、電力は供給電圧の違いにより「特別高圧」「高圧」「低圧」に分けられていて、それぞれの電圧に応じて異なる電気料金が設定されているということがあります。この3つの分類を需要家別に説明すると、特別高圧は大規模工場やデパート、オフィスビル、病院など。高圧は中小規模の工場やオフィスなど。低圧は一般家庭や個人商店などです。

 前述したように電力自由化はこれまで段階的に進められてきましたが、まずは2000年3月から特別高圧(原則、契約電力2000kW以上)の需要家を対象として、売電(小売事業)の部分自由化が導入されました。

 次に、2004年4月より小売自由化の対象が500kW以上に拡大され、2005年4月の全面施行により、高圧の全て(50kW以上)にまで拡大されました。

 高圧部門の小売が全面的に自由化された2005年度時点で、新電力による高圧需要家への販売は約140万MWhでした。これは、市場全体においてはわずか約0.4%という数値であり、残りの99.6%は大手電力会社による販売となっていました。この時点においては、高圧部門における新電力の存在感は非常に小さいものだったのです。

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