遊園地がメガソーラーに、島にはCO2の少ない石炭火力発電所エネルギー列島2016年版(34)広島(2/3 ページ)

» 2016年12月13日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

2つの川のあいだに28メートルの落差

 沿岸部とは対照的に降水量の多い内陸部へ行くと、小水力発電の取り組みも活発だ。山に囲まれた北部の北広島町では、中国電力の99カ所目の水力発電所「芸北(げいほく)発電所」が2016年3月に運転を開始した(図5)。

図5 「芸北発電所」の建屋と水が流れる方向。出典:中国電力

 この小水力発電所は中国山地から流れてくる川に面して建っている。ただし発電に利用する水は別の川から取り込む。2つの川のあいだをつないで、2カ所のダムの水量を調整するための分水路が山の中を通っている。2キロメートルほどの距離がある分水路の途中に取水口と水槽を設けて、そこから水圧管路で発電所まで水を送り込む方式だ(図6)。

図6 「芸北発電所」の所在地(上)、発電設備の全体構成(下)。出典:中国電力

 水流の落差は28メートルになり、最大で毎秒2立方メートルの水を発電に利用できる。発電能力は430kWで、年間に220万kWhの電力を供給できる見通しだ。一般家庭の600世帯分に相当する。これまで分水路を流れる水はダムの水量を調整するために使われてきたが、新たに再生可能エネルギーの電力を生み出せるようになった。

 長距離にわたって敷設する水圧管路には一般的な鉄製ではなくて、高密度ポリエチレン樹脂で作った水管を採用した(図7)。鉄管に比べて腐食に強く、耐震性に優れている点が特徴だ。中国電力は芸北発電所で初めて採用した。軽量で施工しやすいうえに、市販品を利用できるために工事費が安く済むメリットもある。水車発電機には汎用的な横軸フランシス水車を導入した。

図7 水圧管路の敷設工事(上)、水車発電機の外観(下)。出典:中国電力、イームル工業

 県営のダムでも小水力発電の導入プロジェクトが始まっている。県内に10カ所あるダムを対象に発電事業の可能性を調査した結果、中部の東広島市にある「福富ダム」ならば採算がとれる見通しが立った。ダムの直下に発電所を建設して、ダムから下流に放流する水を取り込む方式だ(図8)。42メートルの落差で最大1.5立方メートル/秒の水量を利用できる。

図8 「福富ダム」に建設する小水力発電所。出典:広島県土木建築局

 発電能力は370kWまで上げることが可能で、2017年度に運転を開始する予定だ。年間の発電量は200万kWhを見込んでいる。このうち180万kWhを固定価格買取制度で売電して、年間に5200万円の収入を得ることができる。一方で事業費に約4億円かかり、毎年の運転維持費に900万円を想定している。買取期間の20年間の累計では3.3億円の利益を出せる計画である。

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