東京電力がIoTを活用して新事業の創出や電力システムのコスト削減に着手する。米OSIsoftと提携し、さまざま設備やシステムの情報を統合する情報基盤を構築。これを中核に、リアルタイムな運転データの分析による火力発電所の運用コスト削減など、さまざまな取り組みを実施する計画だ。こうした自社実践を重ねたシステムを他社に提供していくことで、新たな収益源を確保する狙いもある。
東京電力ホールディングス(以下、東京電力)は2016年12月13日、同年11月に戦略提携を発表した米OSIsoftの情報基盤サービスを活用し、東京電力グループ各社が保有するデータを活用した新たなIoTサービスの事業化の検討を開始したと発表した。IoTを活用した事業で新たな収益の確保を目指すとともに、国内の電力システムの効率化およびコスト低減を図る考えだ(図1)。
OSIsoftは1980年創業の企業で、米国サンフランシスコに本社を置く。「PI System」というIoT情報基盤を展開しており、世界の電力・ガス・水道などのインフラ業界では1000社以上の導入実績がある。米国の全発電設備の情報基盤では50〜60%のシェアを持つという。日本の電気事業者がOSIsoftと提携するのは、東京電力が初である。
東京電力はOSIsoftのPI Systemを情報基盤として採用し、東京電力グループ各社が有する電力事業のさまざまなビッグデータを集約。このデータを知的資産としてさまざまなかたちで活用していく(図1)。
例えば東京電力の発電事業を担う東京電力フュエル&パワーでは、合計600万kW(キロワット)分の火力発電所を対象に、センサーなどで取得した稼働データを活用する遠隔監視システムの運用を2017年1月から開始する。稼働状況をモニタリングすることで故障の予兆を検知し、予期しない発電所の停止を回避する他、熱効率管理で発電効率を向上させて発電コストの低減を図る狙いだ。PI Systemにデータを集約して運用ノウハウの蓄積を図り、その後、遠隔監視システムを導入する火力発電所の範囲拡大や海外の発電所への展開も視野に入れる(図2)。
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