地域で生み出す再生可能エネルギーの熱を利用したトマトの栽培プロジェクトが青森県内で進んでいる。運転中の木質バイオマス発電所の排熱を農業用ハウスに送り込み、高糖度トマトを栽培する計画だ。雪国で課題になる冬の暖房コストを再生可能エネルギーで削減して農業を活性化させる。
青森県の平川市で2015年12月に運転を開始した「津軽バイオマスエナジー」の木質バイオマス発電所では、特産品のリンゴの木から剪定した枝や森林から切り出した間伐材などを燃料に利用している(図1)。発電した電力は「津軽あっぷるパワー」を通じて地元の公共施設などに供給して、再生可能エネルギーによる電力の地産地消を推進中だ。
さらにバイオマス発電所で生まれる排熱を農業に活用するプロジェクトが進んでいる。津軽バイオマスエナジーの親会社であるタケエイが銀座農園と共同で、バイオマス発電の排熱を利用して高糖度トマトを栽培する計画だ(図2)。発電所の隣接地に農業用ハウスを建設して、2017年4月から高糖度トマトの栽培事業を開始する。
銀座農園はIT(情報技術)を活用した低コスト型の農業用ハウスを国内外に展開している。人気商品の高糖度トマトを安定的に生産して農業経営の効率化に取り組む(図3)。平川市で着手する事業では2棟のハウスを建設する予定だ。ハウス内では季節を問わず高糖度トマトを栽培できて、年間に25トンの収穫量を見込んでいる。
ハウス栽培には冬期の暖房が欠かせない。バイオマス発電の排熱を生かしてハウス内に温風を送り込めれば、年間に数百万円の光熱費を削減できる見通しだ。通常のハウスでは石油を使った暖房機を利用している。バイオマス発電の排熱を使うことでCO2(二酸化炭素)の削減にもつながる。
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