経産省が今回このように「点検・保守」に関して一歩踏み込んだ姿勢で法制化に踏み切った背景には、やはり太陽光発電にからむ事故など重大なトラブルが急増している、ということがあります。
例えば、太陽光モジュールの重大な事故のなかに「架台の飛散事故」というものがあります。これは、台風などの強風でモジュールが飛んでいってしまうだけでなく、モジュールを支えている「架台」も飛ばされてしまい、近隣住民の家屋や車などに被害を与えるという事故ですが、最近こうした事故が多発しています。
電気系統から発火するなどの「焼損事故」であれば、太陽光発電事業者自身の対応で済みますが、こうした近隣住民も巻き込んで重大な被害を与える事故の場合、被害を受けた地域住民から直接、経産省にクレームが入ってくるのです。
こうしたクレームを受けたら、経産省は調査官や査察官を現地に派遣して調査・指導しないといけないのですが、最近、対応件数が急増していて、経産省としても「この問題を早急に解決しないとまずい」ということになっているのです。
経産省がこうしたトラブルに対応しようと、太陽光モジュールの保守点検に関する調査や指導を行う場合、困ったことがあります。それは、保守点検、メンテナンスに関する明確な基準、ガイドラインが存在しない、ということです。何をどうやって、どんな基準で調査し、指導したらよいのかが分からないのです。
そこで今、今回の改正FIT法の施行と同時に、経産省内でも太陽光モジュールの保守点検、メンテナンスに関する明確な基準作りをしないといけない、という機運が高まっているのです。
しかし、こうした基準作り、ガイドライン作りは行政だけの力では実現できません。やはり民間企業や民間団体と一体になって意見交換をしながら考えていかなければならないのです。
そこで今、経産省と民間企業・団体との協力によって「太陽光発電の運用や保守点検、すなわちO&Mに関する新たなガイドライン作りをしていこう」という流れになっているというわけです。
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