太陽光発電で1日に最長6キロ走る、環境性能を追求した「プリウスPHV」電気自動車(1/2 ページ)

トヨタ自動車は2月15日に発売した「プリウスPHV」の新モデルに、量産車では世界で初めて太陽光発電による充電システムを装備した。屋根に搭載した太陽電池で1日に最長6キロメートルまで走ることができる。通常の充電方法を使えば電力だけで68キロメートルの走行が可能になった。

» 2017年02月17日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 太陽光発電で自動車が走る時代になった。トヨタ自動車が2月15日に発売した「プリウスPHV」の新モデルには、オプションで屋根に太陽電池を装着できる(図1)。合計56枚の太陽電池を搭載して、最大で180ワットの電力を作ることが可能だ。発電した電力はバッテリーに充電してモーターに供給する。太陽光で走る世界初の量産車で、PHV(プラグインハイブリッド自動車)の環境性能を高めた注目の新製品である。

図1 「プリウスPHV」の太陽電池(画像をクリックすると拡大)。出典:トヨタ自動車

 トヨタ自動車の試算によると、地域や天候を平均した場合に1日に2.9キロメートルの距離を太陽光発電だけで走行できる。条件が良ければ最長6.1キロメートルまで距離を延ばせる。短距離ならば再生可能エネルギーの電力を使って、CO2(二酸化炭素)を排出しない状態でハイブリッド自動車を走らせることが可能になった(図2)。

図2 太陽電池を搭載した「プリウスPHV」の外観(画像をクリックすると拡大)。出典:トヨタ自動車

 プリウスPHVの新モデルは1kWh(キロワット時)の電力で10.54キロメートルを走る能力がある(JC08モードで測定)。家庭向けの電気料金を1kWhあたり25円で計算すると、50キロメートルの距離を1リットルのガソリン代と同等の120円程度のコストで走ることができる。

 通常のハイブリッド自動車「プリウス」の燃費は最新モデルで37.2キロメートル/リットルである。同じ距離を走る電費(燃費)はプリウスPHVのほうが3割以上も割安になる計算だ。しかも電力で走行しているあいだは排気ガスを出さない。

 CO2を排出しない太陽光の発電量は1日に最大で0.58kWh、平均で0.28kWhを想定している。太陽光で発電した電力は駐車時に専用の「ソーラーバッテリー」(ニッケル水素電池)に蓄電してから、駆動用の大容量のバッテリー(リチウムイオン電池)に充電する方式だ(図3)。

図3 ソーラー充電システムの構成(画像をクリックすると拡大)。ソーラーバッテリー(右上)、ソーラーECU(右下、電子制御ユニット)。出典:トヨタ自動車

 ハイブリッド自動車を走らせる駆動用のバッテリーの蓄電容量は8.8kWhある。5年前の2012年1月に発売した初代のプリウスPHVの2倍に拡大した。電力だけで最長68キロメートルの走行が可能で、初代の26キロメートルと比べて2.6倍の距離に延びた。

 走行時には太陽光で発電した電力をソーラーバッテリーではなくて、小容量の補助用のバッテリーに送る仕組みになっている。補助用のバッテリーからナビゲーションシステムなどの電子機器に電力を供給して、駆動用のバッテリーの電力消費を軽減するためだ。太陽光発電と各種のバッテリーは「ソーラーECU(電子制御ユニット)」で制御する。

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