2050年に自然エネルギー100%、脱炭素の長期シナリオ自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2017年02月20日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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次世代自動車や地熱発電に過大な期待も

 自然エネルギーの拡大と同時に、意欲的な省エネの目標も達成しなくてはならない。2050年までに日本の人口が76%へ減少(2010年比)する政府の見通しと社会構造の変化を前提に、新たな省エネ対策を実行しなくても20%程度のエネルギー需要を低減できると見込む。そのうえで新しい技術を活用した省エネ対策を実施して、追加で20〜30%を削減する。

 WWFジャパンはエネルギー消費量を削減するシナリオの中で、産業・家庭・業務・運輸の4部門それぞれを対象に主要な対策を提言した(図4)。いずれも現時点で導入できる対策が並んでいる。各部門でエネルギー消費量を長期的に削減していくことは十分に可能だが、新しい対策を普及させるスピードが大きな課題になる。

図4 エネルギー消費量の削減シナリオと主要な対策。PJ:ペタジュール(=約2.8億キロワット時)。出典:WWFジャパン

 WWFジャパンの想定では、2050年までに住宅のほぼすべて、それ以外の建築物の約4割が、現在の省エネ法の基準を満たす必要がある。政府は新築の住宅・建築物を対象に、2020年までに省エネ法の基準に適合することを義務づけている。それでも既築分を合わせると、2050年にWWFジャパンの想定する割合まで増やすことは簡単ではない。

 次世代自動車の役割を担うEV(電気自動車)とFCV(燃料電池自動車)のハードルも高い。2050年までにほぼすべての自動車がEVかFCVへ移行して、2030年の時点で走行する自動車の半分以上がEV/FCVになる前提だ。政府が掲げる目標値では、2030年の新車販売台数のうち30%程度をEV/FCVが占める。ハイブリッド自動車を加えても50〜70%である。新車以外を含めた普及率はもっと低くなる。

 一方で自然エネルギーの拡大シナリオにも課題がある。2050年に供給する自然エネルギーの内訳を見ると、地熱と波力の発電電力量を過大に見込んでいる可能性がある。地熱の発電電力量がバイオマスを上回り、波力もバイオマスと比べて5割強の水準になっている(図5)。地熱と波力は発電できる場所が限られるため、これほど大量の電力を国内で作り出すことは極めてむずかしい。

図5 「100%自然エネルギーシナリオ」における1次エネルギー供給量の内訳。TWh:10億キロワット時。出典:WWFジャパン

 とはいえエネルギーの消費量を大幅に減らしながら、自然エネルギーの導入量を最大限に拡大していくことは、国を挙げて取り組むべき最重要のプロジェクトと言える。WWFジャパンの「100%自然エネルギーシナリオ」に可能な限り近づけるための施策の実行が求められる。

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