地熱発電で使わない熱水を生かす、8600世帯分の電力を供給開始自然エネルギー(1/2 ページ)

大分県の山中で21年前から稼働している地熱発電所の近くに、新しい地熱発電所が運転を開始した。既存の地熱発電所では使わない熱水を利用して、沸点の低い媒体を蒸発させて発電する方式だ。地下からくみ上げる蒸気と熱水の量を増やさずに、8600世帯分の電力を供給できるようになった。

» 2017年03月03日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
図1 「滝上地域」の位置。出典:出光興産

 地熱発電所が運転を開始した場所は、大分県の九重町(ここのえまち)にある「滝上(たきがみ)地域」にある(図1)。一帯は地熱資源の宝庫で、九重町内には日本最大の「八丁原(はっちょうばる)発電所」も稼働中だ。

 滝上地域では九州電力が1996年から「滝上発電所」の運転を続けている。この地熱発電所で利用する高温の蒸気をくみ上げる生産基地の構内で、「滝上バイナリー発電所」が3月1日に運転を開始した(図2)。

図2 「滝上バイナリー発電所」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:出光興産

 従来の地熱発電では地下からくみ上げた蒸気と熱水のうち、高温の蒸気だけを分離して発電に利用してきた。低温の熱水は分離後に地下に戻して資源の枯渇を防ぐ(図3)。この熱水を利用して発電できる仕組みがバイナリー方式だ。バイナリー方式でも発電後の熱水を地下に戻すため、従来と同様に資源を保護しながら地熱のエネルギーを最大限に生かすことができる。

図3 「滝上発電所」の蒸気供給と発電の仕組み(画像をクリックすると全体を表示)。出典:九州電力

 滝上発電所で蒸気の供給を担当する出光興産グループの出光大分地熱が、新たな再生可能エネルギー事業としてバイナリー方式の発電所を建設・運営する(図4)。発電能力は5050kW(キロワット)で、国内で稼働するバイナリー方式の地熱発電所では最大の規模になる。

図4 「滝上バイナリー発電所」の冷却塔(画像をクリックすると拡大)。出典:出光興産

 年間の発電量は3100万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して8600世帯分に相当する。九重町の総世帯数(3900世帯)の2倍以上に供給できる電力量になる。

 発電した電力は全量を固定価格買取制度で売電する方針だ。地熱発電(発電能力1万5000kW未満)の買取価格は40円(税抜き)を適用できることから、年間の売電収入は12億4000万円にのぼる。買取期間の15年間の累計では186億円に達する。従来の蒸気を供給する事業の売上に再生可能エネルギーの発電事業が加わる。

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