原子力発電のリスクは短期間には消えてなくならない。使用済みの燃料は高レベルの放射性廃棄物になって、数万年かけて放射能を低減させる必要がある。国民全体にとって非常に悩ましい問題だが、避けて通ることのできない重大な課題だ。すでにフィンランドでは地下に埋設する地層処分施設の建設工事が始まっている。
日本国内では地層処分事業を担当する「原子力発電環境整備機構(略称:NUMO)」が政府の認可法人として2000年に設立された。一方で政府は2013年度に「原子力小委員会」を設置して、放射性廃棄物の処理方法や地層処分技術の検討を進めている(図1)。小委員会では地層処分施設の候補地を選定する要件と基準をとりまとめ、2017年3月2日に開いた会合で公表した。
高レベル放射性廃棄物は使用済みの燃料を直接処分する場合のほか、青森県の六ヶ所村で計画している燃料の再処理によっても発生する。難航する再処理工場の運転が軌道に乗ったとしても、あくまで“中間処理”に過ぎない。
再処理後に残る高レベル放射性廃棄物を“最終処分”するためには、現在のところガラスの中に閉じ込めたうえで、金属製の容器に入れて粘土で固めてから、地下300メートル以上の地層(岩盤)の内部に埋設する方法しかない(図2)。その状態で数万年をかけて、放射能が低減していくことをひたすら待つ。気の遠くなるようなプロセスが必要だ。
当然ながら地層処分に適した場所は限られる。火山や地震の影響を受けにくく、地下水が流入してこないことが主な条件だ。地下深くにある地層ほど、岩盤が緻密で地下水の流れが遅くなる(図3)。酸素も少ないため、地下水と微生物が反応して金属を腐食させる可能性も小さい。こうした特性から、地下300メートルよりも深い地層に放射性廃棄物を埋設する方法が現在の主流になっている。
そこで問題になるのが、地層処分施設を建設する場所の選定だ。政府は3段階の調査を実施して候補地を決定する。その前に調査を実施する候補地を抽出する必要があり、科学的な特性をもとに全国のマップを作成することになっている(図4)。そのマップ作成にあたって火山や断層の活動状況などを要件としてとりまとめ、候補地の適正・不適正の基準を数値で規定した。
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