2つの主要な国際機関が2050年に向けて世界のエネルギー需給構造を転換するシナリオをまとめた。地球の温度上昇を2℃未満に抑えるために2通りのシナリオを策定した。1つは原子力を含めて低炭素電源を拡大する案、もう1つは再生可能エネルギーの割合を全世界で65%まで高める案だ。
先進国29カ国が加盟するOECD/IEA(経済協力開発機構/国際エネルギー機関)と170カ国以上が加盟するIRENA(国際再生可能エネルギー機関)が共同でCO2(二酸化炭素)の長期削減シナリオを策定した。エネルギーを起源とするCO2の排出量を2050年までに削減する道筋を示したもので、21世紀中とそれ以降の温度上昇を産業革命前の1860年代と比べて2℃未満に抑える。
シナリオは2通りある。1つはOECD/IEAが提案するシナリオで、再生可能エネルギーの拡大とエネルギー効率化を中心に、原子力発電とCCS(CO2回収・貯留)でも削減量を増やす(図1)。2015年に主要国が締結した「パリ合意」の目標値と比べて2050年のCO2排出量を大幅に低減できるシナリオになっている。
このシナリオは「66% 2℃ Scenario」と呼び、66%を上回る高い確率で2100年の温度上昇を2℃未満に抑えることが目標だ。一方でIRENAも同様の目標に向けて別のシナリオを提案する。原子力やCCSに頼らず、再生可能エネルギーの拡大とエネルギー利用の効率化でCO2排出量を削減していく(図2)。
IRENAは全世界のエネルギーの供給構造を再生可能エネルギー主体に転換するロードマップ(REmap)を策定した。各国が新たな対策を実施しない場合と比べて、エネルギーの供給量を縮小しながら再生可能エネルギーの比率を増やす。2050年のエネルギー供給量を27%削減したうえで、再生可能エネルギーの比率を65%まで高める目標だ(図3)。
REmapで想定する2050年の再生可能エネルギーは40%を電力、44%を熱、16%を自動車などの輸送機器に供給する想定になっている(図4)。電力では風力発電が最も多く、次いで太陽光発電、水力発電、バイオマス発電、地熱発電の順になる。熱の利用は太陽光とバイオマスが中心だ。
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