中国・モンゴル・ロシア間で電力を輸出入、日本に必要な制度改革日本とアジアをつなぐ国際送電網(3)(3/4 ページ)

» 2017年06月06日 07時00分 公開
[自然エネルギー財団スマートジャパン]

日本と韓国を加えた国際送電網

 ここ数年で中国とロシアに加えて日本・韓国・モンゴルを含む広域の国際送電網を構築する動きが相次いで始まった。本連載の第1回で紹介した「アジア・スーパーグリッド」をはじめ、中国国家電網公司が提唱する「グローバル・エネルギー・インターコネクション」、韓国電力公社による「北東アジア電力連系線構想」が代表的な例である(図7)。

図7 「北東アジア電力連系線構想(Smart Energy Belt)」の実現イメージ。出典:韓国電力公社

 これらの構想をもとに2016年3月には、日本のソフトバンクグループ、中国国家電網公司、韓国電力公社、ロシアの国営送電会社であるロスセチの4社が、国際送電網を推進するための調査・企画を実施することで覚書を締結した。各国で電力事業に取り組む有力企業が集結して国際送電網の構築へ動き出し、にわかに実現性が高まってきた。

 とはいえ国際送電網を日本まで展開するためには、解決すべき課題は少なくない。まず外交面で、電力取引に関する共通認識を関係各国の間で形成する必要がある。さらに日本国内の電力市場を改革して、欧州の先進国のように需給バランスや価格変動に応じてダイナミックに電力を取引できるシステムの構築が欠かせない。

 現在のところ日本では各地域の電力会社ごとに送電網が分かれていて、地域間で電力を融通する際にも制約が生じるケースは少なくない(図8)。地域間の連系線の利用ルールが電力会社を優先する形になっていることが阻害要因になっている。新たに運転を開始する発電設備が増えて、北海道や東北で自然エネルギーの電力が大量に作られているにもかかわらず、需要の大きい首都圏まで届けられない事態が頻繁に発生する。

図8 日本の系統制約の発生状況。(クリックで拡大) 出典:電力広域的運営推進機関

 こうした送電網の問題に加えて、電力を取引する卸市場の取引量が少ないという問題がある。自由化が進んだ現在でもなお、小売電気事業者が卸市場を通じて必要な電力を確保できる状況になっていない。2020年4月に実施する発送電分離(発電・小売事業と送電事業の分離・独立)までに、卸市場の取引量を増やすことが急務である。国際的に電力を融通し合うためにも、国内の卸市場の活性化が大前提になる。

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