北東アジアで電力の輸出入が最も活発に行われているのは、ロシアと中国の2国間である。ロシアの極東地域にあるアムール州の水力発電所から、隣接する中国の黒竜江省へ大量の電力が送られている(図4)。
黒竜江省では自動車産業をはじめ製造業が発展して、電力の需要が急速に増加した。ところが地域内の発電設備のうち76%を石炭火力が占めている。石炭火力発電所の排ガスによる大気汚染が深刻な状況で、CO2(二酸化炭素)の排出量も大きな課題だ。
一方ロシアのアムール州では、モンゴルの高原地帯からオホーツク海まで続くアムール川の流域に、大規模な水力発電所が2カ所ある。それに加えて新しい水力発電所の建設も進んでいる。アムール州と黒竜江省の間では合計5本の国際連系線を使って年間に約30億kWhの電力が送られてきた(図5)。中国側から見るとロシアの水力発電所の電力を輸入することによって、大気汚染やCO2排出量を抑制できるメリットがある。
ただし2016年にはロシアから中国へ輸出する電力の価格が引き下げられたため、ロシア側が輸出量を大幅に減らした。輸出価格は黒竜江省の公定卸売価格に合わせて年に1回見直す契約になっていて、市場を通じた価格設定はできない。
このように2国間だけの取引では、コストや需給バランスに合わせた柔軟な相互融通ができず、国際送電網のメリットを十分に生かしきれない懸念がある。より多くの国を接続したうえで、広い地域を対象に取引できる制度やシステムの整備が北東アジアにも求められる(図6)。
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