2030年自然エネルギー30%へ、自治体の協議会が提言自然エネルギー(1/3 ページ)

自然エネルギーの導入加速化を求める声が、地方自治体から上がっている。全国34道府県を正会員とする「自然エネルギー協議会」と、19政令指定都市を正会員とする「指定都市自然エネルギー協議会」が、それぞれに提言書を取りまとめた。

» 2017年09月04日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

カーボンプライシングで地域経済を活性化

 自然エネルギー協議会(会長:徳島県知事 飯泉嘉門氏)は2017年8月30日、経済産業省に政策提言書を提出した。岩手県盛岡市で先頃開催された同協議会第13回総会で採択されたものだ。脱炭素社会へ向けた世界的な動きを念頭に、「意欲的な自然エネルギーの導入目標の設定」や「電力システム改革の着実な推進と系統問題の解決」など、導入拡大への前向きな取り組みを促す内容となっている。

徳島県知事・飯泉嘉門氏(左)が、経済産業大臣政務官・大串正樹氏に提言書を手渡し、その内容を説明

 具体策の1つとして、「カーボンプライシング(炭素の価格付け)」を軸とした二酸化炭素排出量取引制度の整備を提唱。カーボンプライシングの収入を活用することで、国民負担を抑制しつつ、自然エネルギーの導入加速化が可能であることをアピールする。これを通して、新たなイノベーションを創出し、地域経済の活性化につなげていきたい考えだ。

地産地消型エネルギーで強じんなまちづくりを

京都市長・門川大作氏(左)が、環境大臣・山本公一氏(7月当時)に提言書を手渡した

 これに先立ち、指定都市自然エネルギー協議会(会長:京都市長 門川大作氏)は2017年7月11日、都内で開いた第9回総会において提言書を取りまとめ、経済産業省および環境省に提出した。道府県の協議会同様に、自然エネルギーの導入拡大を強く求めるものであり、「持続可能な社会の構築、強靭(じん)なまちづくり」の観点からも自然エネルギーは不可欠であるとの認識を示している。

 提言内容としては、「地産地消型の分散型エネルギーの普及拡大」を重視しているところに特徴がある。平時はもちろん、災害時のエネルギーセキュリティといった防災の観点も踏まえ、電力系統に接続した分散型エネルギーだけでなく、電力系統に接続していない状態(オフグリッド)での地産地消型エネルギーについても考察。具体的には、大型蓄電池・エネルギーマネジメントシステムなどを駆使した効率的なエネルギー利用や、排熱・太陽熱・地中熱などを生かした熱利用システムなどについて、関係省庁の横断的かつ積極的な導入支援を求めている。

指定都市自然エネルギー協議会、第13回総会の様子

自然エネルギー導入加速化へ、エネルギー基本計画見直しに期待

 道府県、政令指定都市、いずれの協議会の政策提言にも、2030年に日本が目指すべき自然エネルギーの割合が示されている。その数値は、どちらの提言においても30%。これは、「エネルギー基本計画」に基づいて、2015年7月に策定された国の「長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)」の数値22〜24%を上回るものだ。

 欧米など自然エネルギー先進地域においては、40%を超える目標を設定しているところも少なくない。日本においても、提言にある通り、系統運用の見直しをはじめとした導入促進策により、自然エネルギーの割合を高めることは十分に可能だろう。国の「エネルギー基本計画」は、今年度中にも見直しの検討が予定されている。今回、発表された自治体の政策提言に耳を傾け、自然エネルギーのさらなる導入拡大を明記してほしいものである。

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