研究グループは、人間の視覚の特性を利用することで、効率の低下を抑えつつ半透明化を実現した。人間の視覚は、中程度の波長である黄色や緑の光には敏感だが、波長の短い青色光や、波長の長い赤色光にはそれほど敏感ではない。一方、ペロブスカイト層は波長が短い光ほど効率よく吸収して電気に変換でき、波長の長い光ほど吸収しにくくなる。
波長の長い赤色光に対する変換効率を高めるために、プラズモン共鳴という現象を利用した。金や銀などのナノ粒子は、プラズモン共鳴により、特定の波長の光を吸収する。ステンドグラスにも金や銀のナノ粒子が含まれ、それらが光を吸収するため、多彩な色を示す。この金属ナノ粒子は光を吸収し、そのエネルギーを近くの物質に渡す、という性質を持ち、これを「アンテナ効果」と呼ぶ。同研究グループは、銀ナノキューブ(立方体)が強いアンテナ効果を持つことと、銀ナノキューブと電極を近づけることで、吸収する波長を自在に変えられる「電極カップリング効果」をすでに見つけていた。これら2つの効果を組み合わせることで、人間の視覚では捉えにくい赤い光のエネルギーをペロブスカイト層に渡し、長波長での変換効率を高めた。
研究ではまず、通常のペロブスカイト太陽電池が持つ、不透明な銀電極の厚さを光の波長よりも1桁以上薄い10ナノメートル(10万分の1ミリメートル)にすることで半透明にした。さらに、ペロブスカイト層の厚さも通常より薄い180ナノメートルにすることで、透明度を高めた。このとき、銀ナノキューブ(一辺の長さが約70ナノメートルのものを使用)を導入し、電極カップリング効果によってその吸収域を赤色光付近に合わせることで、ペロブスカイト層を薄くしたことによる損失を抑え、エネルギー変換効率を9.7%に保つことができた。人間の視覚感度も考慮した「視覚透明度指標」は、ペロブスカイト層を薄くする前と比べて28%上昇している。
こうした半透明太陽電池は、住宅やオフィスビルなどの窓ガラス、サンルームやカーポートの半透明屋根、自動車やバスのスモークガラスやサンルーフなどへの応用が期待される。
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