2040年以降の燃料電池、「究極の性能目標」をNEDOが公表蓄電・発電機器

NEDOが新しい燃料電池の開発ロードマップを公表。ロードマップの改訂は今回で4回目となるが、今回初めて2040年以降に達成すべき目標値(究極目標)を盛り込んだ。

» 2017年12月25日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は水素社会の実現に向けた技術開発の方向性を示すため、「NEDO燃料電池・水素技術開発ロードマップ」の改訂作業を進めている。2017年12月にそのうちの燃料電池分野について、新しいロードマップの内容を先行公開した。

 NEDOは、産学官が長期的視野を共有して技術開発に取り組むために、燃料電池・水素技術開発ロードマップを2005年に策定。これまで3度改訂を行ってきた。今回、4度目の改訂作業のために、メーカーや電力事業者、大学、研究機関などで構成される委員会をNEDOが企画し、これらの経済産業省の「水素・燃料電池戦略ロードマップ」に掲げられている普及目標に対応する技術課題について取りまとめた。さらに、水素社会の本格導入を目指す産業界のニーズに応えるため、より長期的な視点で2040年以降に達成すべき目標値(究極目標)を初めて設定している。なお、公表したロードマップで対象としている燃料電池は、燃料電池自動車(FCV)などの移動体、家庭用や業務・産業用の定置用燃料電池などだ。

 このうちFCV・移動体の技術開発ロードマップは、2040年頃のFCVの普及目標を達成するために、究極目標の数値最大出力密度9kW/l(キロワット毎リット)、最大負荷点電圧0.85V(ボルト)、作動最高温度120℃などを設定した。これらの目標を実現することで、自動車に積載する燃料電池の小型化と高性能化が進み、多数車種への拡大が期待できるという。

「FCV・移動体」技術開発ロードマップの一部 出典:NEDO

 業務・産業用燃料電池の技術開発ロードマップは、新たなモノジェネ市場(システムから電気だけを取り出して利用する方法をモノジェネレーション方式と呼び、その市場はモノジェネ市場と呼ばれている)へ対応した燃料電池システムの飛躍的な高効率化を目指し、2040年以降の達成性能レベルとして、数kW級の小容量で発電効率60%LHV(Lower Heating Value)以上、中容量の数十〜数100kW級で発電効率70%LHV以上などを設定した。さらに、大量普及に向けた更なる課題として「系統電力への連携・再生可能エネルギー大量導入時のスマートコミュニティに関する開発・実証」、「将来的な低炭素化ガス(カーボンニュートラル・メタンなど)への対応」、究極目標として「超高発電効率の達成(80%以上)」を記載した。

「業務・産業用燃料電池」技術開発ロードマップの一部 出典:NEDO

 家庭用燃料電池の技術開発ロードマップでは、2030年ころまでに530万台の普及台数、5年で投資回収可能なシステム価格である50万円程度を目指し、小型化などによる設置工事費の低減や、2040年以降の究極目標として発電効率45〜60%LHV以上を設定した。

「家庭用燃料電池」技術開発ロードマップの一部 出典:NEDO

 NEDOは今後、水素ステーション、水素発電、Power to Gas(P2G)の分野についても公開準備を進め、ロードマップ全体を2018年春に公開する予定だ。

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