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蓄電池の需要は急増、2030年の市場規模は1.2兆円以上に蓄電・発電機器(1/2 ページ)

調査会社の富士経済は今後の二次電池の市場規模予測を発表。再生可能エネルギーの導入拡大や自家消費モデルの進展により、2030年のグローバル市場規模は、2017年比6.6倍となる1兆2585億円まで拡大すると予測した。

» 2018年06月05日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 調査会社の富士経済は、低価格化によりリチウムイオン電池の採用が増加する、電力貯蔵・動力分野における製品別二次電池の世界市場調査を行った。2030年のグローバル市場規模は、2017年比6.6倍の1兆2585億円まで拡大すると予測している。

電力貯蔵システム向け二次電池の世界市場 出典:富士経済

 再生可能エネルギーの大量導入により電力系統の運用における調整力の確保や送配電網の整備が課題となっている。課題の解決手段として電力貯蔵システムが有望視されており、系統側での周波数制御や需給調整、再生可能エネルギーの出力変動対策用途、需要家側でのピークカット、ピークシフト、デマンドレスポンス(DR)をはじめとしたエネルギーサービス用電源用途など、活用シーンが広がってきた。

 製品別にみると住宅用蓄電システム向け二次電池は、これまで米国や一部のアジアなど、系統インフラが不安定な地域における、鉛電池を用いた非常用電源用途が市場の大半を占めていた。近年ではドイツ、イタリア、英国、豪州、米国の一部で、家庭向け電気料金の高騰(とう)、FIT価格の下落、補助制度の整備もあり太陽光発電の自家消費用途で、サイクル性能に優れたリチウムイオン電池の採用が進んでいる。2017年実績は鉛電池203億円、リチウムイオン電池413億円となった。今後も太陽光発電の自家消費トレンドの拡大を背景に、市場は拡大していくとみられ、2030年にはリチウムイオン電池は2453億円に拡大すると予測する。

 東日本大震災後に市場が形成された日本では、2016年は住宅用蓄電システムを主対象とした国の購入補助制度の廃止により需要が低迷した。2017年はシステムメーカーが効率的な販売ノウハウを構築し、それらが販売店に一層浸透したことや、ユーザーニーズに沿ったシステム開発が進んだことで市場が活性化した。2019年以降はFITによる太陽光の余剰電力の買い取り期間が満了となる家庭が登場し始めることを背景に、自家消費トレンドの進展、DRや仮想発電所(VPP)用電源としての採用が増加し、市場拡大が期待される。

 なお、外資系電池メーカーの一部には、堅調な需要が予想される案件規模の大きい自動車向けや海外の系統用電力貯蔵システム向けに材料や生産設備などの経営資源を集中させる動きもみられ、住宅用蓄電システム向けの電池供給面でのリスクになる可能性があるとみている。

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