約定価格の上昇や供給信頼度の確保などが課題として指摘されている容量市場。制度の改善に向け電力広域的運営推進機関の「容量市場の在り方等に関する検討会」では、オークションの需要曲線作成の鍵となる「Net CONE:Cost of New Entry」の見直しに着手した。
電力の供給力(kW)を確保する仕組みとして、2020年度に容量市場制度が開始され、これまでに計6回のメインオークションが開催されてきた(約定結果の公表は現時点、第5回2024年度開催分まで)。
全国の約定価格及びエリアプライスは、2021年度以降上昇傾向にあり、電源の維持・管理費用の上昇がその主な要因と推測されている。また2024年度メインオークションでは、北海道/東北/東京/九州の4エリアで供給信頼度が未達成のまま約定処理を終えるなど、電力の安定供給確保の観点からも課題を抱えている。
国は、容量市場が効果的に機能しているかどうかを定期的に検証しており、容量市場開設から5年が経過した今、容量市場について包括的な検証を行い、必要に応じて既存の制度にとらわれずに見直しを実施することとしている。
このため電力広域的運営推進機関の「容量市場の在り方等に関する検討会」では、オークションの需要曲線作成の鍵となる「Net CONE:Cost of New Entry」の見直しに着手した。
「Net CONE」とは、新規電源建設の総コスト(Gross CONE:Cost of New Entry)から、電力量(kWh)販売等の他市場収益を差し引いた「正味(Net)」の固定費用である。
容量市場メインオークションで用いる需要曲線は、停電コストと調達コストのトレードオフ曲線を用いて作成しており、目標調達量(kW)と指標価格(円/kW)の交点を通るように設定されている。
現在、この指標価格としてNet CONEが用いられており、上限価格はNet CONEの1.5倍とされている。最新の2025年度メインオークションにおける需要曲線及び指標価格は図2の通りである。
Net CONEの算定にあたっては、モデルプラントとして「CCGT:コンバインドサイクルガスタービン」方式LNG火力を採用しており、モデルプラントのGross CONEは「発電コスト検証WG」の算定方法を基礎としている。このGross CONEは、容量市場開始前にデータが得られた「2015年発電コスト検証WG」の数値が現在も継続して使用されている。
ただし、Net CONEの算定に用いるインフレ率等の経済指標は毎年度更新することとしており、これまでの6回のオークションではNet CONEは表2のように推移している。
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