太陽光発電の構造的な安全性を確保するために、「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン」の改訂作業が進められている。野立ての太陽光発電システムは、何に留意して設計しなければならないのか? 「PVJapan2018」で、ガイドラインの策定に携わった奥地建産の高森氏が解説した。
太陽光発電システムの設置量の増加に伴い、強風によって太陽光パネルが飛ばされたり、積雪や豪雨によって倒壊したり水没したりする事例が増えてきている。「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン」は、こうした状況を受けて2017年に策定された。太陽光発電を真に社会に定着させるためには、発電システムとしての信頼性を向上させることが急務との認識のもと、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業として作成に至った。実際の作業は、NEDOからの委託を受けた太陽光発電協会と奥地建産が共同で実施。現在、杭(くい)や架台、水害などに関する実証実験・評価分析が進められており、2018年度末までには改訂版が発表される見通しとなっている。
太陽光発電協会が主催する「PVJapan2018」(2018年6月20〜22日、パシフィコ横浜)において、設計ガイドラインの策定・改訂に携わる奥地建産の高森浩治氏(耐風プロジェクト ジェネラルマネージャー)が講演を行った。「太陽光発電システムの構造安全確保への取り組み」と題し、設計ガイドラインの解説を行うとともに、改訂内容の概要を明らかにした。
高森氏は、設計ガイドラインで示された安全性を確保するためのポイントを次の9つに整理する。
最初のポイントである「事前調査」については、建設予定地が太陽光発電設備を設置する敷地として適しているかどうかを、幅広い視野で見ていくことが重要であると強調。地質図や古地図をもとにその土地が構成された経過をたどること、過去に近隣で行われた地盤補強工事の有無などについてもチェックしなければならないことなどを説いた。
次の「地盤調査」は、スウェーデン式サウンディング試験が基本となる。調査ポイント数については目安の数字(下表)が示されたが、盛り土等により地盤構成が不均質になっている場合には数を増やすなど、地盤の状態に合わせて適宜対応していかなければならないという。
発電所の規模 | 調査ポイント数 |
---|---|
50kW未満(約500m2) | 3 |
100kW(約1000m2) | 3〜5 |
1000kW(約1万m2) | 10以上 |
「設計荷重」は、JIS C 8955:2017 「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算定方法」に準じて算定する(ただし、公共工事標準仕様書などで指定があった場合にはそれに従う)。想定される荷重には、上部構造に作用し基礎に伝達される固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風圧荷重・地震荷重の他、基礎に直接作用する固定荷重、土圧・水圧、地震荷重などがある。高森氏は、中でも注意しなければならないのが風圧荷重と積雪荷重の増加であるとして、「架台の構造設計や、今使っている部材を見直さなければならない状況だということをご理解ください」と話す。
「許容応力度設計」とは、「その荷重を受けても元の状態に戻る弾性範囲内で設計してくださいという考え方」(高森氏)。設計ガイドラインでは、設計荷重のさらに1.5倍程度の安全率が目安とされている。この安全率をみておかないと、20年間のうちに3割程度の発電所が損壊してしまう確率になるという。
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