エナリスがデマンドレスポンスの提供を開始、東電・九電の調整力落札で電力供給サービス

新電力のエナリスは、東電・九電が公募した調整力を落札。これを受け、2018年7月からデマンドレスポンスサービスの提供を開始した。

» 2018年07月10日 11時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 エナリス(東京都千代田区)は、東京電力パワーグリッドおよび九州電力が公募した、2018年度を対象とする調整力(電源I'厳気象対応調整力)を落札した。調整力は、電力の安定供給維持のために、電力の過不足調整に使用する電力のことで、今回の落札に伴い、2018年7月からアグリゲーターとして、電力需給ひっ迫時におけるデマンドレスポンス(DR)サービスの提供を開始した。

 DRは電気の供給状況に応じて電力ユーザー(需要家)が電気の消費パターンを変化させ、需給バランスを保つことをいう。電力ユーザーは、一般送配電事業者などからの要請に応じて節電などを実施し、購入電力量を抑制する。抑制に成功した場合、抑制量に応じた報酬を得ることができる。

 また、DRは、非効率なピーク電源を不要にし、将来的な発電容量の適正化と、安定した電力供給や調整コストの低減に寄与する仕組みとして期待されている。

デマンドレスポンスサービスのイメージ 出典:エナリス

 エナリスは、これまで多数の電力ユーザーを束ね、抑制量を集約して一般電気事業者などへ提供するアグリゲーターとして、DRに関わる実証事業を行ってきた。さらに、ネガワット取引が開始となっ2017年度は、2018年1月に関東地方で発生した大寒波の際の対応などを通じ、実サービスの経験を積んだという。今年度は、サービスの提供エリアを拡大するとともに、VPP実証事業のノウハウを生かし、蓄電池を遠隔制御して調整力として活用する新たな試みもはじめる。

 同社は、人々の周りにある多様な電気を効率的に活用し、自由に融通し合う、“分散型エネルギー社会”への転換を目指し、VPP実証事業やブロックチェーン実証などのさまざまな取り組みを行っている。分散型エネルギー社会とは、太陽光や風力といったクリーンエネルギーをはじめ、個人が所有するエネファームや電気自動車など、比較的小規模で地域に点在しているエネルギーを効率的に活用し、利用者同士が自由に電気を融通し合うエネルギー社会のことをいう。DRサービスもこれらの取り組みの一つとして、今後、積極的に推進する方針だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.