新しい「エネルギー基本計画」、FITなど再エネ普及策は「抜本的見直し」法制度・規制

政府が日本の新しい「エネルギー基本計画」を閣議決定。再生可能エネルギーを「日本の主力電源」とすることを初めて明記した。一方、FITなどの再生可能エネルギーの普及施策については、2020年度末までに「抜本的に見直し」を行う方針を示した。

» 2018年07月04日 08時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 政府は2018年7月3日に「第5次エネルギー基本計画」を閣議決定した。脱炭素化を目指し、再生可能エネルギーを「日本の主力電源」とすることを初めて明記。原子力発電については、依存度の低減を目指しつつも、「実用段階にある脱炭素化の選択肢」と位置付けている。

 エネルギー基本計画の改定は、2014年以来4年ぶりとなる。政府は近年のエネルギー情勢を踏まえた、2030年、2050年を見据える新しいエネルギー政策の指針と位置付けている。2030年の電源構成(エネルギーミックス)は第4次計画と同じ数値目標を据え置き、「まずは確実な実現に全力を挙げる」とした。

「第5次エネルギー基本計画の概要」 出典:経済産業省

 再生可能エネルギーについては、「温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で、長期を展望した環境負荷の低減を見据えつつ活用していく重要な低炭素の国産エネルギー源」とし、引き続き2030年のエネルギーミックスにおける比率は22〜24%を目指す。さらに「2050年に主力電源化」を目指し、電源としての競争力向上に求められる発電コストの低減と、「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」からの自立を図る取り組みを積極的に推進するとした。

 なお、今後のFITを中心とした、再生可能エネルギーの普及に向けた制度の在り方についても言及されている。FITをはじめとする再生可能エネルギーの利用促進に関する制度については、「2020年度末までの間に抜本的な見直しを行う」と宣言。国民負担や系統制約の課題、電力システム改革に基づく各種新市場との連動、諸外国の状況なども参考にしつつ、再生可能エネルギー源の最大限の利用促進と、国民負担抑制の両立を可能にする仕組みの構築を目指す方針だ。

 さらに、こうした再生可能エネルギーの利用促進と国民負担抑制の両立に向け、系統制約の解消につながる「日本版コネクト&マネージ」の具体化を早期に実現するとした。

 原子力発電については、「可能な限り依存度を低減する」としつつも「長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働を進める方針を示した。2030年のエネルギーミックスでは20〜22%の比率を目指す方針だが、これには30基程度の原子力発電所が稼働する必要がある。しかし、基本計画の中では原子力発電所の増設やリプレースについての言及は見送られている。

 この他の原子力関連したポイントとしては、プルトニウムについて「保有量の削減に取り組む」と明記した。具体的な手法としては、プルサーマルの推進を挙げている。しかし、現状どの程度の原子力発電所が再稼働できるかの見通しは立っていない。よって、プルサーマルによってどこまで削減を進められるかは不透明な状況だ。

 石炭火力発電は、発電コストが安価で供給が安定した「重要なベースロード電源」とする。ただし、温暖化ガスの排出量が多いことなどを考慮し、今後は非効率設備を順次廃止していく方針だ。ガス火力へのシフトも進めるが、高効率な石炭ガス化複合発電(IGCC)や、排出されたCO2を回収・利用・貯留するCCUS(Carbon dioxide Capture,Utilization&Storage)などの技術開発も推進する。

 この他、高性能な蓄電池の開発およびその活用の強化、水素社会の実現に向けが燃料電池開発や輸送分野における燃料電池車の導入促進なども盛り込んだ。

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