再エネは主力電源、原子力は「脱炭素化の選択肢」――日本の長期エネルギー戦略法制度・規制(1/2 ページ)

経済産業省は日本の2050年までの長期エネルギー戦略に対する提言をまとめた。脱炭素化の方針を掲げるが、実現に向けたシナリオは一本化せず“複線”とし、総花的な内容となっている。

» 2018年04月12日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 経済産業省は2018年4月10日、2050年までの長期エネルギー戦略を検討する有識者会議「エネルギー情勢懇談会」を開催し、これまでの議論を「エネルギー情勢懇談会提言〜エネルギー転換へのイニシアティブ〜」としてまとめた。脱炭素化を目指し、再生可能エネルギーは日本の主力電源とすることを明記。原子力発電については、依存度の低減を目指しつつも、「実用段階にある脱炭素化の選択肢」と位置付けた。

 2017年の「パリ協定」以降、日本を含む主要国は2050年に温室効果ガスを80%削減するという目標を掲げている。エネルギー情勢懇談会では2017年8月から、この目標を達成するための長期的なエネルギー選択の戦略について議論を進めてきた。

各主要国の温室効果ガスの削減目標と戦略の概要 出典:経済産業省

 再生可能エネルギーの普及、車載を含む蓄電池の低価格化、さらにはこうした分散電源を統合制御できるデジタル技術の発展などにより、グローバルに脱炭素化が加速している。提言では、こうした動きを「エネルギー転換に向けた国家間の覇権獲得競争の本格化」と表現している。こうした状況を受け、2050年に向けた日本のエネルギー戦略も、脱炭素化への注力を念頭に置いている。

 ただし、脱炭素化に向けたシナリオは「複線とする。2050年という長期展望においては、「技術確信の可能性と不確実性、世界情勢変化などの不透明性が付きまとう」とし、取り組みやシナリオを一本化せず、「あらゆる選択肢の可能性を追求」するとした。

 提言では各電源の2050年の導入目標などについては示していない。再生可能エネルギーに関しては、「再エネは経済的に自立し脱炭素化した主力電源化を目指す」とし、これに向け送電網の増強や、水素・蓄電技術、デジタル技術の開発に注力。さらに「人材・技術・産業の強化に直ちに着手」するとした。

 原子力発電については「可能な限り依存度を低減する」としつつも、「実用段階にある脱炭素化の選択肢」と位置付ける。社会の信頼回復も必須とし、「安全炉の追求、バックエンド技術の開発、人材・技術・産業の強化に直ちに着手。福島事故の原点に立ち返った責任感ある真摯(し)な取り組みこそ重要」とした。

 化石燃料を利用する火力発電については「過渡的な主力」とし、天然ガス火力へのシフトとともに、非効率な石炭火力をフェードアウトして高効率な石炭技術に傾注するとしている。

 政府は現在、2030年の日本の電源構成などを示す「エネルギー基本計画」の見直しを進めている。こちらも、再生可能エネルギーを「主力電源」とし、さらに省エネや水素の利活用を、再エネ、火力、原子力に続く「第4のエネルギー源」と位置付ける方針だ。しかし、具体的な電源構成比率については、見直し後も再生可能エネルギー比率を22〜24%、火力発電比率を56%、原子力発電比率を10〜22%というこれまでの大枠を維持する見通し。今回の提言も、エネルギー基本計画の策定状況を反映し、総花的な内容となった。

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