農業の新しい収益源として注目が集まっている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」について解説する本連載。今回はFITの買取価格が10円台に突入する中で、持続的なソーラーシェアリング事業を実現するための手法について解説する。
2018年は「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」にとって激動の1年でした。第五次環境基本計画の重点戦略に「営農型太陽光発電の推進」が盛り込まれ、制度改正によって一時転用許可期間の10年以内への延長が認められるようになり、その流れに乗ってソーラーシェアリング推進連盟(関連記事)も発足しました。全国で新たなソーラーシェアリング事業を展開するプレイヤーも増え、今後の普及に向けた足固めの1年でもあったように思います。
さて、毎年行われるFIT制度変更の中で、太陽光発電にとっては大波のような制度の変更が続いています。やはり常に事業へ取り組もうとする人々の懸念材料となるのは、「翌年のFIT単価がどうなるか?」ということと、中長期的な価格低下のトレンドだと思います。ソーラーシェアリングについても、FITを利用した売電モデルから自家消費型へのシフトが始まっているとはいえ、まだまだFITという補助輪に支えられながらの発展であり、この流れと無関係ではいられません。
ソーラーシェアリングの場合、「地上設置型と比べてコスト面などで不利なのでは?」という質問を受けることが多く、2018年度の事業用太陽光発電の調達価格である18円/kWh(キロワット時)の水準であっても、もはやソーラーシェアリング事業は難しいと考える方も多いようです。
今回は、“FIT価格10円”の時代が近づく中で、ソーラーシェアリングの今後の見通しについて考えていきます。結論から言えば、今後FITが10円台やそれ以下となっても、農業と共存する自然エネルギー事業としてのソーラーシェアリングは、十分にエネルギー事業としての事業性を確保できると考えています。
ソーラーシェアリングが注目されるようになってきた2017年の時点で、私は「FIT価格が15円/kWhになっても、発電事業としての事業性は十分確保できる」と講演などでお話をしていました。そして、実際に事業用太陽光発電のFIT価格が15円とうわさされる2019年を迎えた今日でも、その時の予想は当たっていたと確信しています。
ソーラーシェアリングに用いられる設備資材は、架台以外はほぼ地上設置型と共通です。藤棚式のレイアウトで、トラクターやコンバインが支障なく作業できる空間を確保しようとすると、安価な地上設置型架台と比べて3倍程度の架台コストがかかります。これは、単純に架台に必要となる鉄やアルミの量、そして接合のためのボルトといった資材が増えるので、今後も地上設置型に大きく近づくコストになることはないと考えています。
一方で、ソーラーシェアリングの場合は既に開墾された土地である水田や畑を活用しますから、昨今の地上設置型でコスト高要因となっている土木造成や、排水・調整池などの整備に要するコストは、基本的に不要です。従って、設備設置費用で見ると、「架台+施工コスト」はかさむものの、土地造成絡みのコストが不要になるため、トータルでは立地制約が厳しくなってきた地上設置型と変わらないと見ています。
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