農業の新しい収益源として注目が集まっている「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電事業)」について解説する本連載。今回は千葉大学らが実施したソーラーシェアリングに関する全国調査の結果から見えてきた、ソーラーシェアリングの現状と課題について考察する。
全国の1465カ所の市町村農業委員会に対し、私が代表取締役を務める千葉エコ・エネルギーからの委託調査という形で千葉大学倉阪研究室とNPO法人地域持続研究所がソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に関する実態調査を行いました。(ニュースリリース、pdf)。本稿ではその調査結果について、私なりの視点で解説していきます。
全体の傾向としては、ソーラーシェアリングのための農地転用許可件数は2018年8月末までで1347件となり、2014年と比較して4年間で6.2倍に増加しました。こうした許可事例の増加と作付作物の多様化が進む一方、営農に対する取り組みが不十分な事例が目立つこと、優良事例の周知が不十分なことで、農業委員会ベースではソーラーシェアリングに対するマイナスのイメージが先行しているといった課題も明らかになっています。
今回の調査では、2018年10月に各市町村農業委員会宛に調査票を送付し、1174カ所から回答を得ました(回答率80.1%)。これは、同種の調査と比較するとかなり高い回答率です。一方で、ソーラーシェアリングは特定の地域に事例が集中しているという特性がある(本調査での最多は1市町村で137件)ことから、そういった自治体からの回答の有無によって全体のデータに偏りなどが出る可能性もあることには留意する必要があります。
調査結果について見ていくと、回答のあった農業委員会の80%で「ソーラーシェアリング」という言葉を知っており、その意味も理解している一方で、16%は「聞いたことがない」や「聞いたことがあるが意味は分からない」としています。農業委員会におけるソーラーシェアリングの認知は進んでいる一方で、まだ十分に浸透しているとはいえないようです。
ソーラーシェアリングに関する農地転用申請を受けた事例があるのは338カ所、全体の約29%です。都道府県別の許可件数を集計すると千葉県が313件でトップとなり、静岡県の173件、群馬県が132件と続きます。この傾向は農林水産省の調査と一致しており、回答を寄せた農業委員会の約3割でソーラーシェアリングの申請を受けたことがあるというのは、新たに明らかになった実態です。さらに関東・中部・四国では許可件数が多い一方で、北海道・東北・北陸・中国・九州・沖縄は少ない傾向があります。私も何度が指摘している通り、ソーラーシェアリングに力を入れて取り組む事業者の有無によって、地域によって大きく差がついていると見られます。
ソーラーシェアリング設備下での作付作物は多様化している一方で、ミョウガ・サカキ・米(水稲)・しいたけ・ブルーベリーと特定の作物への事例集中も予想通り見られました。一度許可事例が出ると、それを前例とした新規事例が続くことや、ある種のパッケージ化が行われていることも推測されます。逆に、事例が1件しかない作物の種類も多く、各地で試行錯誤が行われていることを示しているといえるでしょう。
なお、一時転用許可後に取り消しとなった事例があるという回答が8カ所からありましたが、事業者による廃止の届け出、設備設置者の変更、着工前の事業中止などの事由であり、事業者による自発的な取り下げによるものであって、作物の収穫量を理由としたものはありませんでした。
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