太陽光で“充電もできる”燃料電池を新開発、仕組みは植物の「光合成」蓄電・発電機器

名古屋工業大学が太陽光エネルギーで蓄積と放電が行える新しい燃料電池の開発に成功。従来の燃料電池は電気を蓄えられない「発電のみの装置」だったが、特定の有機分子を利用することで、単一装置内での充電も可能にしたという。

» 2020年02月14日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 名古屋工業大学の研究グループは2020年1月、太陽光エネルギーで蓄積と放電が行える、光充電可能な燃料電池を新たに開発したと発表した。従来の燃料電池は電気を蓄えられない「発電のみの装置」だったが、「AQDS-H2」という有機分子を利用することで、単一装置内での充電も可能にしたという。

 今回開発した蓄電池は、負極側の電解液にはAQDSという有機分子が溶け込けこませている。太陽光を照射すると、AQDSは電解液中の水素原子を引き抜いてAQDS-H2という分子に変換され、電池全体として充電状態となる。一方放電の際、負極ではAQDS-H2からAQDSへの変換反応が起こる。それと同時に正極では、空気中の酸素分子(O2)が水(H2O)に還元される。放電で生成したAQDSは、再び光照射によってAQDS-H2に変換することが可能であり、電池として何度も繰り返して使用できる。

今回開発した蓄電池の構造模式図 出典:名古屋工業大学

 植物が生命活動のために行う光合成は、太陽光のエネルギーを用いてCO2Oを糖に変換して貯蔵し、空気中の酸素で分解(呼吸)して化学エネルギーを取り出している。今回開発した蓄電池はこの光合成におけるCO2OをAQDS、糖をAQDS-H2Oに置き換えたシステムとみなすことができ、蓄電池内のAQDS-H2と空気の酸素が反応して生じるエネルギーを電気として外部に出力する。

植物の光合成と今回開発した蓄電池の比較 出典:名古屋工業大学

 この電池の放電過程は、水素を燃料とした一般的な燃料電池と比べて、安全性の高さが特徴だという。加えてAQDSからAQDS-H2への変換(充電反応)は、外部電源を用いることも可能なため、太陽光だけでなく風力や水力、地熱などの他の再生可能エネルギー電源も活用できるとしている。

 ただし現時点で開発した燃料電池の出力電力は0.5V程度と小さく、起電力の向上や反応過電圧の低減が課題として残っている。研究グループでは今後は、負極活物質(AQDS)の改良やセル構造の最適化を実施し、実用化に向けた研究を加速させるとしている。

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