日本の風力発電に“新たな風”、相次ぐ「洋上市場」への新規参入――各社の狙いとは?自然エネルギー(1/3 ページ)

洋上風力市場への参入機運が高まっている。大手ゼネコンや海運会社など、これまで脇役だった業種が主役に躍り出た。スマートエネルギーWeek2021「WIND EXPO(風力発電展)」で、はっきり分かったトレンドとは? 日本に吹きはじめた、新しい風を読む。

» 2021年04月15日 05時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

 2021年3月、東京ビッグサイトで開催された「WIND EXPO(風力発電展)」は、長引くコロナ禍にありながらも、近年にないにぎわいを見せていた。それを牽引(けんいん)していたのは、洋上風力に関連する出展企業であり、洋上風力に関心をもつ企業からの来場者だった。風力発電展といいながら、会場はほぼ“洋上風力発電展”の様相を呈していた。

スマートエネルギーWeek2021「WIND EXPO(風力発電展)」会場風景

 洋上新法(再エネ海域利用法)の施行後、洋上風力発電の促進区域も指定され、いま各地で大規模な洋上風力プロジェクトが組成されようとしている。2050年までにカーボンニュートラルを実現するとの政府方針とも相まって、洋上風力発電は次世代電源の主役と目されるに至っている。欧州企業の参入も続々と発表されるなど、世界的にも注目の的だ。

 一方で、国内の大型風車メーカーはいずれも撤退してしまい、これから洋上に並ぶ風車はすべて海外メーカー製になる見通しだ。とはいえ、洋上風力発電所を建設・運用するためには、幅広い業種が協力する必要があり、それぞれの業種に大きなビジネスチャンスが広がっている。そのことは今回の風力発電展にも表れており、従来は脇役とみなされていた業種が大きな存在感を発揮した。また、海外企業との提携をアピールする企業も目立った。ゼネコン、エンジニアリング、海運、海底ケーブルなど、多くの来場者が足を止めていた企業ブースを紹介する。

大林組、シーメンス・ガメサと連携して広範な洋上技術を提供

 ゼネコン大手の大林組は、今回初めて「WIND EXPO(風力発電展)」に出展した。陸上の風力発電所には既に豊富な施工実績を持ち、幅広い技術力を有する同社だが、ひときわ注目を集めていたのは洋上風力に関する展示だった。

建造が進む大林組のSEP船(Self Elevating Platform:自己昇降式作業台船)

 水圧差を利用することで、杭打機を使うことなく海底に設置できる基礎「スカートサクション」や、揺れを抑えながら風車を係留できる「テンションレグプラットフォーム」など、着床式・浮体式それぞれに先進の工法を披露。洋上の風況を高精度に予測できる風況精査技術など、さまざまなソリューションが示された。

 同社は世界的な風力発電設備メーカー、シーメンス・ガメサ・リニューアブル・エナジー(略称SGRE、本社・スペイン)と連携協定を締結しており、大林組の技術にはSGREがもつ洋上風力に関する知見も生かされているという。

 大林組は現在、洋上風車の建設に不可欠な大型SEP船(Self Elevating Platform:自己昇降式作業台船)の建造も進めており、この市場への期待は大きい。「洋上風力市場はこれから必ず伸びていくマーケットとして重要視しています」と土木本部生産企画部長の佐々木哲男氏は語る。一つのウィンドファーム(大規模風力発電所)をEPCとして受注できれば、その利益は大きい。これまで陸上風力で培ってきたノウハウも生かして、新たに生まれる洋上風力市場でのシェア獲得を目指す。

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