日本の風力発電に“新たな風”、相次ぐ「洋上市場」への新規参入――各社の狙いとは?自然エネルギー(2/3 ページ)

» 2021年04月15日 05時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

“浮体式”のリーダーを目指す大成建設

 大成建設のブースは、洋上風力のなかでも浮体式に特化した展示内容となっていた。その背景にあるのは、1970年代から続くコンクリート浮体構造物の実績。1977年に建造された高強度軽量コンクリート製台船をはじめ、各種浮き桟橋、浮き防波堤を数多く手掛けてきた。今後は、ここで蓄積された浮体構造物技術を、浮体式洋上風力発電設備の基礎などに活用していきたい考えだ。

大成建設 エネルギー本部エネルギー推進部長 渡邊哲也氏

 また、同社は2019年10月、浮体式洋上風力向け浮体基礎の開発を手掛けるイデオル(本社・フランス)と覚書を提携。日本におけるコンクリート製浮体基礎の開発と市場開拓に関して、共同で取り組んでいくことを発表した。イデオルには、安定性に優れた方形リング形状の浮体「ダンピングプール」の特許技術があり、フランスと日本で2基の浮体式風力発電プロジェクトに参画してきた実績もある。大成建設としては、イデオルの技術と知見も積極的に活用し、浮体式洋上風力分野での地位確立を狙う。

 「洋上風力では着床式が先行していますが、日本の海洋の状態を考えると、いずれ着床式のフィールドは枯渇して、深い海域にも設置できる浮体式が主役になってくると予想されます。我々は、関連技術を着実に積み上げていくことで、将来のマーケットに求められるものを今のうちから用意し、風力発電の導入拡大に貢献していきたいと考えています」(エネルギー本部エネルギー推進部長 渡邊哲也氏)。

日揮、プロジェクトマネジメント能力をアピール

 総合エンジニアリングの日揮は、プロジェクトマネジメント能力を前面に打ち出す。風力に本格的に取り組み始めたのは3年ほど前からだが、同社には創業以来90年にわたり、世界80カ国で約2万件のプラント建設プロジェクトを推進してきた実績がある。

日揮 ウィンドパワープロジェクト事業部長 勝岡洋一氏

 「サイズの大きなプロジェクトを、品質・安全・工程・コストすべてを管理しながら進めていけるところに我々の強みがあります。また、我々の実績の約70%は海外での経験ですから、海外メーカーが多数入ってくる大規模洋上風力には親和性が高いのです」とウィンドパワープロジェクト事業部長の勝岡洋一氏は話す。

 日揮では、環境・経済性調査から設計、建設、運転保守に至るまでの包括的なサプライチェーンを一貫管理。洋上浮力ならではのサプライチェーンの複雑さや大型化に対応し、設計および購買のスペシャリストが、サプライヤーの選定から評価・モニタリングまで確実に実施するという。「10年近い歳月をかけて、無数のタスクで遂行される洋上風力だからこそ、成功のカギはプロジェクトマネジメントにある」(勝岡氏)と強調する。

商船三井、台湾の洋上風力でオルステッドに作業支援船

 海運業を中心に130余年の実績を誇る商船三井は、2020年に続けて2度目の出展となった。今回は、世界的な再生可能エネルギー電力会社オルステッド(本社・デンマーク)の100%子会社であるオルステッド台湾と、2020年に定期貸船契約を締結したSOV(Service Operation Vessel:サービス運用船)の模型を展示。洋上風力プロジェクトにおける同社の存在をアピールした。

 SOVは、洋上風力発電所のメンテナンス技術者を複数の洋上風車に派遣するための宿泊設備をもち、一定期間洋上での活動が可能な支援船だ。同船と洋上風車の距離を常に安全に保つためのDPS(Dynamic Positioning System:自動船位保持機能装置)や、同船から洋上風車に技術者を安全に渡すためのモーション・コンペイセイション(Motion Compensation:船体動揺吸収機能)などを備えている。同船は、2022年上半期の竣工が予定されており、オルステッドが台湾台中沖で開発を進める大彰化(Greater Changhua)洋上風力発電所のメンテナンス支援業務に従事することになるという。

商船三井 石炭・再生エネルギープロジェクト部 風力発電チームリーダー 井上慶一氏

 「この船は、洋上風力が日本より進んでいる台湾で使われるものですが、ゆくゆくは日本でも必要になってくるはずです。洋上風力市場は今後必ず成長が見込める分野だと思いますので、我々としても積極的に関わっていく方針です」(石炭・再生エネルギープロジェクト部 風力発電チームリーダー 井上慶一氏)

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