日本企業の脱炭素経営、実態調査で見えた現状と今後の課題とは?自然エネルギー(1/2 ページ)

カーボンニュートラルへの動きがグローバルで加速するなか、日本国内においても脱炭素社会に向けた事業環境整備が進められている。企業のGX(グリーントランスフォーメーション)を実現するためには、何が必要とされるのか。脱炭素経営を目指す企業の現状と課題が明らかになった。

» 2022年01月31日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]

 政府が2020年10月に発表した「2050年のカーボンニュートラル宣言」をきっかけに、日本における脱炭素への動きは加速し、企業の経営にも大きな影響を与えつつある。しかし、多くの企業は「市場環境の変化が早すぎて全体像を把握できない」「カーボンニュートラルに向けて何から取り組むべきか分からない」など、さまざまな悩みを抱えている。

 日本総合研究所とアビームコンサルティングは共同で「日本企業における脱炭素経営の取り組みの実態」についてアンケート調査を行い、2022年1月26日にその結果を発表した。併せて、調査結果の分析に基づくGX(グリーントランスフォーメーション)実現へのポイントも示した。アンケートは2021年9月18〜20日に、省エネ法および温対法の報告対象事業者309社を対象にWeb経由で実施。対象業種は、製造業(最終製品)、製造業(〜中間製品)、卸売業・小売業、金融・保険業、不動産業・物品賃貸業、運輸業・郵便業、情報通信業の7業種。

 同調査は、エネルギーの需要家企業における現状と課題の傾向を把握するため、カーボンニュートラル実現に向けた取り組み状況について、「1.戦略」「2.対策」「3.データ管理/報告」の3つを軸に行われた。

サプライチェーンを含めた戦略策定と見える化に遅れ

 同調査によると、70%強の企業が「カーボンニュートラル実現へのコミットメント」を表明している。一方で、具体的な行動計画を含む戦略ロードマップに関して、「2050年までのロードマップを策定できている」と回答した企業は16%に留まっている。さらに、サプライチェーンを含めたロードマップについては、10%の企業しか策定できていない。また、「温室効果ガス排出量の見える化」については、約半数の企業しか実施には至っていなかった。

(図表1)「カーボンニュートラル」の実現に向けた戦略の策定状況に関する調査結果 出典:日本総研、アビームコンサルティング

 日本総合研究所とアビームコンサルティングは、「この結果から、多くの企業において、2050年のカーボンニュートラル実現が重要な経営課題と認識される一方、サプライチェーン全体を含めた温室効果ガス排出量の可視化や、目標達成に向けた具体的な戦略策定が未整備であり、今後早急にアクションが必要な状況にあることが明らかになった」とする。

Scopeごとの対策状況も調査

 温室効果ガス排出量の削減対策については、Scope1(企業による直接排出量)、Scope2(エネルギー利用に伴う間接的な排出量)、Scope3(サプライチェーンにおけるその他の間接的排出量)に分けて回答を求めている。

 Scope1における温室効果ガス削減対策では、「省エネ」が計画済み・実施済み44%、検討予定を含めて81%とトップ。他に「天然ガスへの燃料転換」「輸送における電化」「熱需要における電化」「脱炭素燃料・ガスへの燃料転換」が上位を占めたが、計画済み・実施済みは20%前後。検討予定を含めても60%台となっており、多くの企業において、具体的な計画や対策の実行はまだこれからという状況が伺える。

(図表2-1)Scope1における対策状況 出典:日本総研、アビームコンサルティング

 Scope2における削減対策は、実質的には再エネ電力の調達ということになる。その方法としては、電力会社から買う電力の小売りメニューを見直す(導入済み37%、検討予定含め70%)よりも、自社の敷地内に再エネ発電設備を設置するオンサイト発電(導入済み55%、検討予定含め86%)など需要家企業が自ら発電に取り組むケースが目立った。

(図表2-2)Scope2における対策状況 出典:日本総研、アビームコンサルティング

 Scope3に関しては、他社を巻き込んでいく必要があることなどから全般に取り組みが遅れており、すでに対策に着手している企業は34%にすぎない。削減対策における課題としては、「取引先と連携した対策の実施」(46%)および「取引先に対するコスト負担の依頼が難しい」(43%)が突出しており、自社だけでは解決できないという障壁が大きなネックになっていることが浮き彫りになった。

(図表2-3)Scope3における対策状況 出典:日本総研、アビームコンサルティング
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