日本企業の脱炭素経営、実態調査で見えた現状と今後の課題とは?自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2022年01月31日 07時00分 公開
[廣町公則スマートジャパン]
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エネルギーコスト情報を一元管理している企業は少数

 温室効果ガス排出量のデータ管理/報告の仕組みについては、「エネルギー使用量のみ」もしくは「エネルギー使用量+コスト合計値」が73%を占めており、従来の法対応を前提とした対象だけしか管理できていない状況が判明した。また、エネルギーコストの明細データ(契約単価、再エネ賦課金、燃料・原料調整費等)まで一元管理している企業は少数(15%)であることも分かった。

(図表3)エネルギーコストデータの管理状況に関する調査結果

 両社は、こうした状況のままでは、「温室効果ガス排出削減対策の投資対効果の評価」や「経営への市場影響の把握」が困難であり、企業経営と連携したGX(グリーントランスフォーメーション)マネジメントの構築も難しいと指摘する。

日本企業のGX実現に向けた4つのポイントとは?

 同調査を踏まえ、両社は、企業のGXに向けては「カーボンニュートラル実現を目的としたロードマップ策定」「サプライチェーンでの連携したCO2削減対策」「法対応前提のデータ管理からの脱却」「DSF(デマンド・サイド・フレキシビリティ)創出による新たな収益化」の4つが重要であるとして、そのポイントを次のように整理する。

1.カーボンニュートラル実現を目的としたロードマップ策定

 GX実現に向けて実施すべきロードマップを策定するために、想定される複数の温室効果ガス削減対策を、投資対効果が高い順序で可視化することが求められる。温室効果ガス削減対策の投資対効果は、調達するエネルギー価格の変動に伴い変動するため、市場環境の変動状況に応じ、温室効果ガス削減対策の投資対効果を継続的に評価し、必要に応じ実施計画の見直しを前提とする柔軟なロードマップを策定することが必要になる。

(図表4)市場環境変化によるGHG削減対策コストの変動イメージ

2.サプライチェーンでの連携したCO2削減対策

 サプライチェーン全体のCO2削減において、企業間の連携やコスト負担が課題になっている一方、サプライチェーンの上流・下流を含めた複数企業間の連携は欠かせない。そこで、連携に向けた取り組みとして、各社が相互にWin-Winとなる温室効果ガス排出量算定スキームおよび削減対策モデルの構築から始めることが有効であると考えられる。

3.法対応前提のデータ管理からの脱却

 温室効果ガス排出量のデータ管理/報告の対象が法対応前提の対象に留まっている実態から、現在の企業のデータ管理体制では、今後の市場変化による影響への対応が困難になっている状況が明らかになった。GX実現に向けて、エネルギー価格変動予測に基づく最適な温室効果ガス排出削減対策の選定を行うための最初の取り組みとして、コストデータを含めたデータの一元管理が求められる。

(図表5)カーボンニュートラル実現を目的としたマネジメント体制のイメージ

4.DSF創出による新たな収益化

 今後、企業が企業経営とGXを実現し持続的に成長し続けていくために、新たな収益化を図るビジネスモデル構築の重要性がより一層高まると考えられる。2050年カーボンニュートラルを企業経営におけるリスクとしてだけでなく、ビジネス機会として認識し、デジタルテクノロジーや自社のアセットを活用していくことが重要となる。

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