日本が目指す「温室効果ガス46%削減」、その実現に必要な再エネ導入の「現実解」を考えるソーラーシェアリング入門(45)(1/3 ページ)

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について解説する本連載。今回は4月に菅総理大臣が公表した日本の新たな気候変動対策目標について考察します。「2030年時点で2013年度比46%の温室効果ガス削減」の達成に求められるものとは?

» 2021年05月06日 07時00分 公開

 2021年4月22日に菅総理大臣が新たな気候変動対策目標を公表し、日本は2030年時点で2013年度比46%の温室効果ガス削減を目指すこととなりました。その達成に向けて翌23日には梶山経済産業大臣が、2030年の電源構成で再生可能エネルギーと原子力を5割以上に増やしていく考えを示したほか、大量導入可能な再生可能エネルギー電源として太陽光発電に注目する発言も出ています。

 今回は、この新たな気候変動対策目標を踏まえた再生可能エネルギーのさらなる導入拡大と、その中でソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)がどういった役割を果たすべきかを整理します。

46%削減に向けた2030年の電源構成目標

 従来、2030年に非化石電源比率44%という目標が設定されていたことを踏まえ、エネルギーミックス目標の中で再生可能エネルギー(22%〜24%)と原子力発電(20%〜22%)の割合が設定されていました。これは気候変動対策目標が2030年に2013年度比26%削減という数値の下での計画です。しかし、今回この削減目標を46%まで引き上げるとなると、非化石電源改め脱炭素電源の比率が5割以上という表現では、全く足りないのではと感じてしまいます。

 基準年となっている2013年度時点では、国内の二酸化炭素排出量の36.7%を事業用発電部門が占めていました。しかし、仮に2030年に脱炭素電源比率を50%まで高めたとしても、同部門における二酸化炭素全体の排出削減量には16%程度の貢献となる試算です。

 下記の図では2030年に向けた最終エネルギー消費の想定値見直しが資源エネルギー庁から示されていますが、電力需要全体の抑制は進むものの、電化率は大きく向上しない見込みです。

日本の2030年における最終エネルギー消費の想定値 出典:総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第42回)資料より

 では、電気以外の熱利用や燃料部門で、省エネルギーを含めて残りの削減量を捻出することが果たしてどこまで出来るのかを考えると、少なくとも2030年に向けては最大限の電化を図りつつ、その電力需要を再生可能エネルギーで賄っていくことが重要となることは確実です。原子力発電所の再稼働や新増設を図るべきと言う議論もにわかに高まってきていますが、もし2030年時点で発電電力量の20%を占めようとすれば、30基程度の稼働が必要になるという見解が経済産業省から示されており、これには現在停止中の設備と建設中の設備をほぼ全て稼働させる必要があります。

 こうした状況を踏まえると、再生可能エネルギーの導入目標は最大限高い数値を掲げ、その実現に向けて総力を挙げることが重要だと言えるでしょう。

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