窓で太陽光発電を可能にし断熱性能も向上、LIXILがビル向けの新型ブラインド太陽光

LIXILが太陽光発電の機能を備えるビル向けのブラインドを開発。発電できるだけでなく、遮光性や断熱性も両立しており、既築ビルの高性能化・脱炭素化に活用できるという。

» 2022年07月22日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 LIXILは2022年7月19日、「太陽光発電(PV)ロールスクリーンシステム」を開発し、自社オフィスビルにて実証実験を開始したと発表した。

 開発したPVロールスクリーンシステムは、既築ビルの窓まわりへ屋内から後付けで容易に設置できるブラインド。薄型で柔軟性のある太陽光パネルをロールスクリーンの受光面に搭載する構造となっており、太陽光で発電が行える。発電性能は、既築ビルの窓ガラスに多用されている単板ガラス越しを想定した出力測定で、54.5W(1.22m2のロールスクリーン中、PVセル部面積0.842当たりの結果)、平方メートル換算で64.8W/2としている。

開発したPVロールスクリーン 出典:LIXIL

 発電した電力は、カバーフレーム内に内蔵した蓄電池へ充電する構造となっている。この電力はカバーフレームにあるUSBポートを通じて利用可能だ。発電および蓄電状況はPCなどの端末から確認できる他、開閉操作もリモコンとPCから行える。

 太陽光発電モジュールを従来のロールスクリーン同様に巻き取れる仕組みとすることで、視界の自由度が確保でき、従来のファサードデザインを維持したまま設置できる。一般的なロールスクリーン同様に室内からの後付け可能で、電気工事も不要なことから、施工やメンテナンスによる制約が少ないのも特徴だという。

PVロールスクリーンの構造と施工のイメージ 出典:LIXIL

 独自の構造により、夏場は日差しを完全にさえぎることで、まぶしさや暑さを軽減し、冬場は窓まわりの断熱性向上にも寄与する。LIXILの試算ではPVロールスクリーンを設置することで、発電によって太陽光の近赤外線領域のエネルギーを光電変換することにより、夏季における課題の日射熱取得率を従来の「窓+ロールスクリーン(同素材同色のものを採用した場合)」と比べ19.1%高められるとしている。一方、冬季における課題である断熱性も、従来の窓(単板ガラス)のみと比較して44.1%向上できるという。

 PVロールスクリーンシステムはNEDOのプロジェクトを通じて開発したもので、既に実証品開発のフェーズは完了し、LIXILでは製品化に向けた実証実験を進めている。実証は同社の自社オフィスで実施しており、実証面積は約178m2、総数99枚のPVロールスクリーンを、紫、青、緑、黄(金)、茶、銀、薄銀および白の8色を既存の窓部に後付設置している。

実証中のPVロールスクリーン 出典:LIXIL

 LIXILでは建築分野の脱炭素化に向けた課題である、既築ビルの高性能化に向けて、PPVロールスクリーンの実用化を目指すとしている。

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