新電力のLooopが、北海道北部の豊富町で30MWの陸上風力発電所の建設に着手。共同で運営する中部電力、清水建設ほか建設会社が一堂に会し、「安心・安全施工宣誓書」を取り交した。Looop代表の中村創一郎氏が、同プロジェクトの意義と再エネへの取り組みについて語った。
Looopは2202年7月28日、北海道豊富町において中部電力と共同で進めている陸上風力発電プロジェクト「ウィンドファーム豊富」について、工事を請け負う建設会社各社と「安心・安全施工宣誓書」を取り交した。「作業者の安全確保と周辺環境への配慮を怠らず、安心安全の努力を竣工の日まで続けることを誓う」という内容だ。
ウィンドファーム豊富はLooop初となる風力発電所で、2022年6月13日に着工した。国内最大級の風車(4200kW)を8基設置し、連係出力は3万kWの発電所となる。想定年間発電電力量は一般家庭約2.5万世帯分に相当する約7700万kWh。運転開始は2024年4月を予定する。Looop51%、中部電力49%の出資により設立された豊富Wind Energy合同会社が運営を担う。建設工事は清水建設、きんでん、岩田地崎建設の3社が請け負う。
Looopは「エネルギーフリー社会の実現」をビジョンに掲げ、2022年4月には「再エネ電力宣言」を発表。日本のエネルギー自給率の向上とコスト低減に向けて、再生可能エネルギーの普及に取り組むことを表明している。ウィンドファーム豊富はLooopの再エネ普及ロードマップにおける重要なプロジェクトの1つと位置付けられており、代表取締役社長CEOの中村創一郎氏は「社運を賭けた事業」であると述べている。
この日、同プロジェクトの説明を行った中村氏は、北海道で発電事業に取り組むことの意義を次のように話す。
「北海道の再エネポテンシャルは圧倒的な日本一です。陸上風力においては日本全体の55%、洋上風力では日本全体の29%を占めています。環境省の再エネ導入ポテンシャル調査報告書によると、日本の他地域をすべて合わせたポテンシゃルよりも、北海道のポテンシャルの方が高く、圧倒的な風況を誇っていることが分かります。
北海道で生まれた再エネを有効活用しようという動きが出てきており、大型蓄電所の建設や海底送電線の計画も進められています。蓄電所とは電気をためておくことのできる蓄電池を集積させたもので、蓄電所が増えれば風の吹かない日や曇りの日などでも、再エネを蓄電池から取り出して使用することができます。海底送電線は北海道で発電した電気を本州に送るためのもので、これができれば従来の3倍の電気を本州に届けることができます。
北海道は、これから先、ますます日本における再エネの中心地として注目されます。エネルギーの輸出大国として、日本のエネルギーを賄う供給基地となることが予測されています。当社も、非常に高いポテンシャルをもつ北海道にはかねてより注目してまいりました。今回の風力発電事業は、われわれの理念であるエネルギーフリー社会実現のために非常に重要なものとなっております」(中村氏)。
同社は、これまでにも北海道内において、中標津町で大規模太陽光発電所を運営するなど、発電事業を行うとともに、小売電気事業者として電力供給も手掛けてきた。北海道は圧倒的な再エネポテンシャルを有する一方で、全国的にみても電気料金がもっとも高いエリアだ。
中村氏は、この状況についても触れ、「当社の強みは、再エネの“つくる”“コントロールする”“届ける”に関して、一気通貫で事業を行っているところにあります。北海道に関しては、再エネを活用して電気料金削減に貢献できればと思い、20年間電気代が下がり続ける“再エネどんどん割”を道内限定で展開しているところです」と語る。
また、「Looopの理念は、再エネの普及を通じてエネルギーが無料で使えるようになるエネルギーフリー社会の実現です。日本において最速でそれが実現できるのは、再エネポテンシャルが高い北海道であると私は信じています。まずは、ウインドファーム豊富を無事に運開させて北海道の再エネに貢献していけるよう、当社として引き続き尽力してまいります」と述べる。
北海道の新規再エネ開発に関しては、電力系統の空き容量不足がかねてより問題となっていた。これについて中村氏は、「ここ1年ぐらいで状況は変わってきた」として、次のように話す。
「撤退される事業者が出てきたこともあり、一部空き容量が生じている状況です。開発する地域の検討は、そういった空き容量の情報もみながら進めています。ウインドファーム豊富も、もともとは他の事業者が開発を手掛けようとしていたものでした。その事業者が撤退することになったため、当社で引き継がせていただいたという経緯があります」(中村氏)
なお、ウインドファーム豊富は、Looopが中部電力と共同で運営する。北海道のプロジェクトでありがら中部電力と協力する背景には、同社がLooopの株主であるという関係がある。加えて、「中部電力は他の地域において風力発電事業を多数手掛けており、ノウハウを蓄積している」(中村氏)からだという。
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