もはや銅線ケーブル盗難は、太陽光発電業界だけの課題ではない。社会の電源インフラを脅かす問題として、警察庁も動き出した。国や業界団体の取り組みや、対策ソリューションの動向を紹介する。
急増する太陽光発電所の銅線ケーブル盗難は、もはや業界の枠を越え、大きな社会問題となっている。警察庁は2024年9月、「金属盗対策に関する検討会」を立ち上げ、不正買取業者の売買や盗品の流通防止を含めた金属盗難対策の検討を開始した。
もちろん、太陽光発電業界も手をこまねいているわけではなく、太陽光発電協会(JPEA)と再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)は、ケーブル盗難の現状と対策要望をまとめた「太陽光発電のケーブル盗難削減に向けて」を共同で発表。加えて、太陽光発電協会は10月、事業者が行うべき対策を整理した「太陽光発電所(1MW未満)向け災害・盗難対策ガイドライン」を取りまとめた。
同協会は、2024年9月に幕張メッセ(千葉市)で開催された「スマートエネルギーWeek秋(PV EXPO 太陽光発電展)」においても、ケーブル盗難に関する講演を行うなど、この問題に幅広く取り組んでいく姿勢を示している。なお、同セミナー会場では、太陽光発電所の最前線で盗難対策に取り組む事業者の講演もあり、大きな注目を集めていた。
検討会で公表された警察庁の資料によると、2023年の金属盗難の被害総額(太陽光発電所以外も含む)は約132億8700万円。そのうち金属ケーブルが約109億8100万円、材質別では銅の被害が約97億7900万円で、全体の7割を占める。
太陽光発電所における金属ケーブル盗難の認知件数は、2023年1年間に5361件、2024年は6月末までの半年で4161件に達している。一方で検挙件数(検挙率)は、2023年316件(5.9%)、2024年上半期255件(6.1%)に過ぎない。
金属盗難増加の背景には、2020年以降、金属スクラップ価格が上昇傾向にあり、とりわけ銅スクラップが高値で取り引きされている状況がある。2020年には平均約600円/1kgだった銅スクラップ価格が、2023年には平均1131円/1kgにまで上昇している。
また、法規制が十分に整備されておらず、窃盗犯からすると盗品の処分(売却)が比較的容易であることも、盗難増加の一因となっている。金属スクラップに関する法規制には「古物営業法」があるが、本来の用途に従って使用できない金属は「廃棄品」とみなされ「古物」に該当しないため、相手方の確認義務等の対象外にすらなっていない。
独自に「金属くず条例」を設けて、古物に該当しない金属についても相手方確認義務の対象としている都道府県(全国の3分の1)もあるが、その制定が古いこともあって、罰則が軽く、悪質な買取業者に対する規制の効果は限定的なものに止まっているという。
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