営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)について解説する本連載。今回は農山漁村再エネ法に基づく方針改正の内容や、新たに公開されたソーラーシェアリング関連のデータについて解説します。
第7次エネルギー基本計画や新たな地球温暖化対策計画、そして食料・農業・農村基本計画が年始から段階的に閣議決定されてきた中で、農山漁村再生可能エネルギー法(以下、農山漁村再エネ法)に基づく「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進による農山漁村の活性化に関する基本的な方針」(以下、基本方針)も改正され、5月15日に施行されました。
今回は、この基本方針改正において営農型太陽光発電の記述が変更された部分について整理すると同時に、その流れで5月から始まった農林水産省の「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」についても取り上げたいと思います。
基本方針は農林水産大臣、経済産業大臣、環境大臣の連名となっており、農山漁村再エネ法第四条に基づいて策定されます。昨年度から、この3省それぞれが冒頭に挙げた各計画を新たに策定してきた中で、その集大成として農林漁業・農山漁村における再生可能エネルギーの利活用について取りまとめたものだと言えるでしょう。新たな基本方針では、農林漁業・農山漁村における再エネ目標として下記のような事項が定められました。
2030年度において、法の措置の活用により、再生可能エネルギー電気の発電を活用して地域の農林漁業の発展を図る取組を行う地域を200地域以上構築することを目指す。また、地域の未利用資源等を活用して、地域の農林漁業関連施設等でエネルギーの地産地消を推進する、農林漁業循環経済地域の構築に取り組む地区を100地区以上創出することを目指す。
改正前の基本方針では「2023年度において、当該取組を行う地区の再生可能エネルギー電気・熱に係る収入等の経済的な規模を600億円にする」ことが目標として掲げられていましたが、今回は取り組みを行う地域・地区数が定量目標となっています。この他にも、第7次エネルギー基本計画を踏まえた再生可能エネルギーの主力電源化に向けた事項が追記された他、第六次環境基本計画や地域脱炭素ロードマップ、次世代型太陽電池戦略など、以前の基本方針の策定以降に新たに設けられた関係省庁の計画を取り込んでいます。
では、新たな基本方針では営農型太陽光発電についてどのような記述がされているのでしょうか。以下に該当部分を引用します。
(5) 木質バイオマス発電や営農型太陽光発電等の農山漁村固有の資源を活用した再生可能エネルギーの導入の推進
(略)
農地に簡易な構造で、かつ、容易に撤去できる支柱を立てて、一時的に農地を転用し、上部空間に太陽光発電設備を設置し、営農を継続しながら発電を行うことを営農型太陽光発電という。営農型太陽光発電は、本来の目的に即して取り組むことで、売電収益由来の収入、電力の自家消費による光熱費削減等によって農業者の所得が向上し、地域の農業の振興に資することが期待される。今後とも適切な営農の確保を前提に地域活性化に資する形でこうした望ましい営農型太陽光発電について導入を進めていく。また、発電設備下における最適な栽培体系の実証や電力の地産地消を含めたモデル的な取組の支援のほか、望ましい営農型太陽光発電のあり方について、具体的に整理を行う。
一方、営農が適切に行われないなど、営農型太陽光発電の本来の目的から外れている事例も見られ、農村地域で問題化している。この状況を踏まえ、営農型太陽光発電に係る運用の厳格化を図るため、令和6年4月に一時転用許可の基準や提出資料等を定めた農地法施行規則の一部を改正する省令(令和6年農林水産省令第9号)を施行するとともに、制度の目的、趣旨や具体的な考え方を記載した「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドライン」(令和6年3月25日付け5農振第2825号農林水産省農村振興局長通知)を制定したところであり、これら農地法令等に基づき、関係省庁で連携しながら、不適切な営農型太陽光発電の解消を図っていく。
略した部分にはバイオマス利用と小水力発電に関する事項が記載されており、その後に営農型太陽光発電に関する記述が続いています。大きく言えば、バイオマス資源利用、農業水利施設を活用した小水力発電、そして営農型太陽光発電が新たな基本方針において導入を推進する再生可能エネルギーということになるでしょう。
営農型太陽光発電に関する記述の大きな変更点は、旧基本方針だと「営農型太陽光発電はこういう取り組みであることが望ましい」という記載だったのに対して、新たな基本方針では「今後とも適切な営農の確保を前提に地域活性化に資する形でこうした望ましい営農型太陽光発電について導入を進めていく」という表現になっており、導入を進めていくという方針が明確にされました。そして、「望ましい営農型太陽光発電のあり方について、具体的に整理を行う」ということも明示されています。4月に閣議決定された新たな食料・農業・農村基本計画でも同様の記述があり、その具体化のために「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」(以下、検討会)がスタートしています。
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