太陽光発電のセキュリティ課題について、技術的・実務的な観点から検証していく本連載。第2回の今回は、ちまたで噂されるパワコンの「隠された通信機能」と、太陽光発電へのサイバー攻撃による大規模停電の可能性について検証していきます。
前回は、産業用太陽光発電システムの基本構造と、なぜ通信機能が必要なのかについて説明しました。
今回は、より技術的な観点から、実際にどのようなセキュリティリスクが存在するのか、そしてちまたで噂される「隠された通信機能」は本当に存在するのかについて検証していきます。
「中国製の機器には、仕様書に記載されていない隠し通信機能が組み込まれているのではないか」という懸念をよく耳にします。これは技術的に可能なのでしょうか?
答えは「理論上は可能」です。
半導体チップの設計段階で、「アンライセンス(無認可)のWi-FiやBluetooth機能」を組み込むことは技術的に不可能ではありません。つまり、表向きの仕様書には記載されていない通信機能を、こっそり実装することができるということです。
しかし、ここで重要なのは次の事実です。
どんなに巧妙に隠された通信機能でも、電波を発している限り必ず発見できます。「電波暗室」という専門施設をご存知でしょうか。これは、外部からの電波を完全に遮断し、測定対象の機器から発生する電波だけを精密に測定できる特殊な部屋です。携帯電話やWi-Fi機器の認証試験などで使用される施設です。
この電波暗室に機器を持ち込んで測定すれば、
これらがすべて明らかになります。つまり、「見えない脅威」「検出不可能な危険」というものは、技術的にはありえないのです。
実際、日本で販売される通信機器は、電波法に基づく認証を受ける必要があり、その過程で電波暗室での測定が行われています。もし隠し通信機能があれば、この段階で必ず発見されるはずです。
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